2022年05月17日

鋳鉄スリーブとEVER SLEEVE(R)pat.(アルミメッキスリーブ)の優劣について

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唐突ですが、鋳鉄スリーブとアルミメッキスリーブの優劣について私見を述べさせていただきます。

いまだに鋳鉄スリーブに優れた点があると言うことを主張される方がいますが、自分は21世紀の現在、コスト面以外に鋳鉄のほうが優れている点は全くない、と考えています。

アルミのシリンダーに鋳鉄スリーブというのは20世紀の「過去の技術」です。

ただ、コストというのは無視できない問題ですからiBでも今後ともターカロイスリーブを製作する機会が全くなくなるということはないとも思います。

鋳鉄スリーブのほうが優れる点として、エンジンブロック全体の剛性が鋳鉄スリーブを強度メンバーとして成り立っているということが挙げられる場合があります。
ですが、これは暖まっているエンジンの中では起こらない現象なんです。

ご存知のようにアルミは鋳物アルミでも鋳鉄に比べると約2倍の膨張率があります。可動しているエンジンのシリンダー内壁の温度は条件で様々ですが、230度くらいまで上昇すると言われています。
スリーブを外した状態のKAWASAKI Z1のシリンダーブロックで行った私どもの実験ではシリンダーブロックを150度まで熱すると、なんと0.3mmもスリーブ孔が拡大してしまいました。
温度が50度上がるごとに概ね0.1mm内径が拡大するというような比率のようです。

鋳鉄スリーブを大きな嵌め合い代を持って焼き嵌めをしてあっても、稼働しているエンジンの中ではスリーブは遊んでしまっているんです。
Z2/Z1などの40年以上も経過した純正スリーブなどは、冷間でも抜けるほど嵌め合いがゆるいので、これが完全に遊んでいることは既によく知られています。いくら新品の削り出し鋳鉄スリーブを大きな嵌め合いで圧入しても、このことは変わらないとiBでは考えています。

ところがアルミメッキスリーブの場合はどうでしょうか。アルミ同士では膨張率がほぼ変わりません。そして、内燃機関であるかぎりまず熱せられるのは内側のスリーブのアルミです。このためエンジンがかかるとまずスリーブが膨張して、温度が上がるほどスリーブとシリンダーブロックは強固に結合していきます。鋳鉄スリーブが熱がかかると遊んでしまうのとは逆の現象です。

このためにシリンダーブロック全体の剛性はオールアルミのアルミメッキシリンダーのブロックのほうが鋳鉄スリーブ焼き嵌めブロックよりも上になるんです。
もちろん単純に同じ厚さのスリーブ同士を鋳鉄とアルミで比べれば鋳鉄のほうが硬いに決まっていますが、こと稼働しているエンジン内のブロック剛性となるとアルミのほうが上なんです。これがわかってない方が多いです。

実はこのことについて有名なM社さんの技術者の方と情報交換したことがあります。
「あ、それ、間違いないです。オヤジもよく言ってました。(剛性に関しては)『動いてるエンジンの中じゃ、鋳鉄スリーブなんてナンも仕事してへんで。』って。」ということでした。

iBでは鋳鉄スリーブでは最低肉厚1.5mmのスリーブまでは製作します。(本当は2mm確保したいところですが。) 一方アルミでは最低肉厚を3mmとしています。肉厚3mmあれば爆発圧力や内外からかかる力に対してスリーブ単体で十分な剛性が確保できます。
計算上は鋳鉄の1.4倍の肉厚を確保すれば同等の剛性があるのですが、余裕を持って3mmとしています。薄肉スリーブについてはコストを言わなければ7N01のアルミを使えば鋳鉄と同等の厚みも実現できます。メッキの密着については技術的にはすでに解決しているんですが、これまたコストの関係でまだ7N01の受注例はありません。
3mmのアルミスリーブは単体で十分な剛性を持っています。それがブロックと完全に密着してバックアップされていますから、もうなんの不安もありません。

鋳鉄スリーブはスリーブ自体の剛性はあってもシリンダーブロックとの膨張率の差でスリーブが踊ってしまうと、振動して異常摩耗を起こします。またブロックとの隙間が空くと元々悪い放熱性が一段と悪化します。
すでにアルミメッキスリーブが入手できる現代に於いて最高の品質を求める場合、ひとつも長所のない鋳鉄スリーブを選ぶ理由はありません。

現代の二輪車用エンジンの多くはアルミメッキシリンダーです。アルミメッキが優れているからに他なりません。

新しいブロックはそれなりの設計がされているが、昔の設計の鋳鉄スリーブをアルミに置き換えても剛性が出ないというのも、当たっていません。既にご説明した通りアルミスリーブは熱を受けてブロックに完全に密着するので、遊んでしまう鋳鉄スリーブより熱間のブロック剛性が上がります。
むしろ現代のブロックより昔のもののほうが一般に肉厚にできています。(駄肉が多いともいえますが、そのおかげでチューンナップの余地が大きいのも事実です。)

またZなどのシリンダーブロックで剛性が低いのはカムチェーン穴の前後端です。あそこは前端から後端までの大穴が開いていて、前後端の壁にしか部材がないですよね。ブロック全体を曲げる力をかければ、あそこから真ん中で折れる感じになりますが、スリーブの入るあたりは肉もあり形状的にも剛性の問題はありません。
スリーブを焼き嵌めしたってカムチェーン周辺の補強にはなりません。

この辺りも考えてみればわかることです。

つまり、スリーブの特性としてはアルミメッキスリーブは非の打ちどころがないのです。
加えてブロック全体の剛性などという話になっても、やはり鋳鉄スリーブに優位性はないことがご理解頂けたかと思います。

このようにアルミメッキスリーブはあらゆる点で鋳鉄スリーブを凌駕しています。
軽量・放熱のよさ・滑りが良い・焼き付きにくい・膨張率の均一化・圧倒的な耐摩耗性・おまけに錆びない・ピストンリングの摩耗も抑えられるなどあらゆる点で理想のシリンダーになります。
もちろんブロック全体の剛性の件も含めて、です。

どうぞ、安心してICBM(R)(アルミメッキ化スリーブ)をご用命ください。m(_ _)m
ICBM(R)には【永久無償修理】がついています❣️
そして、iBでは全国の加工屋さん・内燃機屋さんでアルミメッキスリーブを完成加工していただけることを願って、アルミメッキの技術を囲い込まず、開放することで、全ての旧車が良い状態を末長く維持していただけるよう、「EVERSLEEVE(R)pat.」(特許取得済み)を発売開始しています。どうぞ、ご利用ください❣️ m(_ _)m
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2022年06月06日

EVER SLEEVE(R)pat.について 1

iBがこれからの製品としてたいへんに期待をしているのが表題のEVER SLEEVE(R)pat.(エバースリーブ)です。

昨年特許も取得してこれから販売に力を入れていこうと考えていますが、いまのところはまだ多くの方に製品をご理解いただけていないようです。
いままで市場に存在していないまったく新しい製品なので、販売が軌道に乗るまでに時間がかかることは覚悟しています。
ICBM (R)ですら売れ始めるまでに4~6年ほどかかっていますからね。

それでも、少しでもお客様のご理解が得られるようあらゆる機会を捉えてPRをしていこうと思っています。

そこで、このblogでもこの製品の企画意図、性能、特許の意義などについてご説明をしてみようと思います。


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画像はなんとエバースリーブを海岸の潮溜まりの海水に浸けてしまって撮影したものです!
考えられないですよね、金属製の精密機械部品を海水に浸けるなんて。

でも、全く問題がないんです。鋳鉄スリーブだったら、本当にあっという間に真っ赤に錆び付いてしまうところでしょうけれども、アルミの母材にニッケルシリコンカーバイドメッキを施した「エバースリーブ」なら錆の心配は全くありません。

「錆びない」ということはエンジン部品の特性としてはそこまで重要視されないとお考えの方もいると思います。エンジンオイルによって適正に潤滑されている状態では殊に問題とはならないというのも事実です。

ところが、私たちが愛するヴィンテージなオートバイに関しては果たしてそうでしょうか。

例えば、一番の売れ筋であるZ1/Z2などの4気筒エンジンのオートバイを考えてみましょう。このような貴重なバイクは毎日足代わりに使われるというようなことはあまりありません。

それどころか、春のツーリングで乗って、秋のミーティングの時に一度乗って、今年は2回乗っただけだったな。そんなケースも多いのではないでしょうか。
4気筒のエンジンが停止している時、バルブが全て閉じているということはまずありません。エンジンが停止したタイミングでいくつかの気筒ではバルブが開いた状態で止まっていることでしょう。そこには外気が侵入する可能性が高いですね。

保存環境にもよりますが、外気の侵入した気筒のシリンダー内壁は間違いなく錆びていると思ってください。油膜の途切れた鋳鉄表面はあっという間に酸化します。つまり錆びてしまうんです。

そうすると、次のエンジン始動時にはエンジンの中を硬い錆でかき回しているような状態になります。エンジンのことを考えて毎月一度はエンジンを始動しているという方もいらっしゃると思いますが、その程度では全然追いつきません。わざわざエンジンを減らしているようなものだと思います。

ところがアルミメッキスリーブであるエバースリーブならそんなことは全く顧みる必要もありません。錆の心配は皆無なんです。
これだけをとってもエバースリーブには鋳鉄スリーブとは比べ物にならないメリットがあると思います。

今回は初回として、意外にも一番アピールしやすいエバースリーブの「錆びない」というわかりやすいポイントをご紹介してみました。

エバースリーブはiBの得意技術アルミメッキスリーブICBM(R)が持つ7大メリットを全て受け継いでいます。
・圧倒的な耐摩耗性(ヴィッカース硬度=Hv2000!)
・軽量 (鋳鉄の1/3)
・低フリクション(リングの摩耗も減少)
・焼きつきにくい
・優れた放熱性
・膨張率の均一化
・そして錆びない!

これからこのエバースリーブの長所について、ひとつ一つご紹介していきたいと思います。
また、さらに内径を完成した状態で販売できるように取得した特許の意義についてもご説明していきます。

どうぞ、おつきあいのほど、よろしくお願い申し上げます。

補足
【ICBM(R)】はアルミシリンダーを作る技術全体の呼称
【EVER SLEEVE(R)pat.】は内径完成状態で販売されるアルミメッキスリーブ単体の呼称です。


posted by sotaro at 14:03| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月09日

EVER SLEEVE(R)pat.について 2

エバースリーブはiBの得意技術アルミメッキスリーブICBM(R)が持つ7大メリットを全て受け継いでいます。
・圧倒的な耐摩耗性(ヴィッカース硬度=Hv2000!)
・軽量 (鋳鉄の1/3)
・低フリクション(リングの摩耗も減少)
・焼きつきにくい
・優れた放熱性
・膨張率の均一化
・そして錆びない!

今回のblog連載ではそれぞれの特徴の内容を詳しくご紹介していこうと思います。
まずは鋳鉄スリーブに比較した場合の
・圧倒的な耐摩耗性
についてです。
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iBがアルミメッキスリーブの開発にトライしたいと思った最大の理由がこの耐摩耗性です。つまり高耐久な「減らない」スリーブ(シリンダー)を作りたい!
という願いがその発端なんです。

iBには当時もKAWASAKI H1/H2などのモデルのボーリング依頼も多数寄せられていました。旧車のエンジンのなかでもこのようなモデルではせっかく我々が神経を使ってお客様のご指示に寸分違わずたとえば0.067mmというようなご指定に沿って、高度な技術を要するプラトーホーニングで仕上げても、これがすぐに減ってしまうことがわかっているわけです。
これは素材の鋳鉄がよくないことに加えてパワーを追求したために大きすぎるポートをもつこれらのモデルでは、ピストンやリングがポートに飛び込むために、そのポートの上下が激しく削られてしまうことが原因です。
せっかく仕上げたシリンダーが慣らし運転を終わる頃には(一説には一度でも高回転まわしてしまうと)すぐにリング音・スラップ音が出てしまうということです。
これでは、正確にクリアランスを仕上げる意味さえわからなくなってしまいます。

90年代当時すでにiBはH社さんのシリンダーの全加工をお手伝いしていました。鋳鉄スリーブもありましたが、どんどんメッキシリンダーの比率が高まっていました。そのメッキはたいへんに固くホーニングするにも通常の砥石では歯がたたず、ダイアモンドの砥石を使う必要があります。常日頃から取り扱っているメッキシリンダーと同じ内径仕上げの技術を、我々が内燃機加工させていただくボーリング依頼のシリンダーにも適応する方法はないんだろうか。

「メッキができれば、減らないシリンダーは作れるじゃないか!」
我々がそのように思い至るのは極く自然なことだったと言えるでしょう。

ただ、実際に旧い鋳鉄スリーブシリンダーをオールアルミのメッキシリンダーに作り替えるのに必要なのは、実は生易しい技術ではありませんでした。ここでその開発の経緯をすべてお話しするのはこの項の目的ではありませんので割愛しますが、ICBM(R)として開発に成功し、ラインナップが完成するまでには、開発開始から12年の歳月が必要でした。

そして、できあがったICBM(R) アルミメッキスリーブ化は結果として現代生産されているスポーツバイクと同様の性能を備えています。

硬度でいいますと、鋳鉄スリーブがヴィッカース硬度(Hv)80~140程度なのに対して、ICBM(R)はメッキ地の部分でHv450と3倍の硬度をもち、さらにそこにHv2,000以上を誇るシリコンの粒子が含まれて摩耗の最前線を担っています。
鋳鉄とは桁違いの硬度、すなわち耐摩耗性能をもっているんです。

よくターカロイ鋳鉄の美点として黒鉛を含有していて自己潤滑性があるので、単純な硬度の比較は意味をもたないなどとして無理に鋳鉄のよさを強調する論調がありますが、このお話が通用したのはターカロイ鋳鉄が開発された昭和40年代のことでしょう。確かにターカロイは他の鋳鉄に比べるとこの点でたいへんに優れた技術ではありましたが、それは硬度をあげることのできない鋳鉄同士で比較した場合の微妙な優劣のお話にすぎません。上の硬度の比較で分かる通り、鋳鉄とICBM(R)のメッキではまったく比較の対象にならないくらい耐久性に圧倒的な差があります。
(第一ターカロイの優秀性を訴えて日本の内燃機屋でまっさきにターカロイ鋳鉄スリーブ製作をはじめたのは僕たちiBなのですから、鋳鉄との優劣について一番知っているのも僕達なんです。)

そうそう、この硬さの差を実感で説明しますと、機械加工をされたことがある方ならすぐにわかりますが、鋳鉄というのはとても削り易い金属です。
超硬のバイトでなくハイスでもサクサクと削れます。
ところがICBMメッキ後の表面は超硬でもコーティングでも歯が立たず、ダイアモンドチップを使わないと削れません。そのダイアモンドのチップもどんどん減っていきます。
なのでホーニングの研磨しろも極力小さくしないと、加工が大変なくらいなんです。ほんとに硬い。

実際6万キロ走行したメッキシリンダーの内径を測定しても有意な摩耗を見出すことはできませんでした。μ(0.001mm)代の摩耗があるのか、測定誤差なのかわからないという程度です。なので、いったい何十万キロもつのかはまだそこまで走った例がないので、わかりません。

とにかく現代に生産されるスポーツバイクはどこのメーカーのものもみんなメッキシリンダーになっています。それはメッキシリンダーが優れていて、重くて錆びて摩耗する鋳鉄スリーブなどこの21世紀に採用する理由がまったくないからです。

ただ、現代ではアルミメッキシリンダーの採用はもう当たり前のことなので、いちいちメーカーも新機種発表のたびに「アルミシリンダーを採用!」なんて自慢もしません。そのためにいまその価値があまり顧みられないのが、とても残念です。

 かくして、我々が夢見た「減らないシリンダー」を作る技術はとうとう現実のものになりました。

それが【ICBM(R)】であり、【EVER SLEEVE(R)pat.】です。

あとはこのメッキ内径の素晴らしさを知っていただいて、
「旧いバイクなんだから、エンジンは昔のままでいいや。」
などと言わず、最新のエンジンにも負けない内径を持った最高のシリンダーを作ることができるのですから、旧いオートバイ・エンジンを未来に残していけるように、どうかアルミメッキスリーブをご採用いただけないでしょうか。

多くのかたにアルミメッキスリーブの良さをご理解いただいて採用していただくこと。それこそが我々iBの次の夢、というわけなんです。
posted by sotaro at 14:09| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月17日

EVER SLEEVE(R)pat.について 3


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・軽さについて

アルミニウムの比重は2.7。鉄(7.8)と比較すると約3分の1の軽さです。
この軽さという点については特に難しく解説する必要はないかもしれませんね。

例えば4気筒のエンジンの場合ですと、(内径の設定次第ですが)スリーブ4本で2kg以上の軽量化になります。

レースなどではオートバイの車重の軽量化のためには涙ぐましい努力が行われますよね。さまざまなパーツに穴を開けることで軽量化するというような手法まで取られます。多くの場合、軽量化は剛性の低下などの限界を見極めながらデメリットが出ないように注意深く行う必要があります。軽量化と剛性低下のどちらを取るかという二律背反の限界に挑むことになります。

ところが、お気づきのようにアルミメッキスリーブ化の場合には、そのことによって大幅な軽量化が達成されるばかりでなく、それ以外にも影響はメリットばかりです。

・圧倒的な耐摩耗性(ヴィッカース硬度=Hv2000!)
・低フリクション(リングの摩耗も減少)
・焼きつきにくい
・優れた放熱性
・膨張率の均一化
・そして錆びない!

このような数多くのメリットと同時に「軽量化」という大きなメリットもまた手にすることができるわけです。

このようにメリットしかないアルミスリーブ化をせずに、どうして重くて摩耗する鋳鉄スリーブを使い続ける必要があるのでしょうか。
コストという問題はありますが、iBの加工費定価で計算すればその差はシリンダーオーバーホール内燃機加工工賃合計の20%程度にすぎません。(鋳鉄スリーブ製作入れ替え209,000円対ICBM(R)264,000円)

これは部品単体での価格差ですから、エンジンの分解組み立て調整に必要な工賃(あるいはご自身の手間)を含めて考えれば、両者の差はさらに小さなものになります。

さらに後々ご説明しますが、エバースリーブ(EVER SLEEVE(R)pat.)をご利用いただき、iB以外の内燃機屋さんをご利用になることでさらに価格差を縮めることができる可能性すらあり得ます。また、完成品スリーブの支給によって納期短縮も可能になるでしょう。

オートバイにとって「軽量」というメリットはほんとうに計り知れないものがあります。同じ出力のエンジンであっても、またブレーキ性能が同じであってもその効果には大きな差が出ることになりますし、さらにコーナリングにおいてもメリットがあります。

特にエンジン上部のシリンダーの位置において、2kgもの軽量化が他のメリットと同時享受できるということの意味はかなり大きなものがあると思います。その結果としての低重心化はコーナーの連続での切り返し時などに実感できるであろうことは容易にご想像いただけることと思います。

ブースでの展示でも、鋳鉄スリーブ単体とエバースリーブ単体を手にとったお客様にはいつもびっくりされています。1/3の軽さというのはほんとうに想像以上ですからね。
ぜひ、サーキットなどでiBブースを見かけたら、お手にとってみてください。
posted by sotaro at 13:37| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月21日

EVER SLEEVE(R)pat.について 4

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・低フリクション(リングの摩耗も減少)

こちらについては過去の実験結果をリンク先のblogでご紹介していますので、ぜひご覧いただければと思います。

http://ibg.seesaa.net/article/470059666.html


この実験自体はICBMR の摩耗が純正鋳鉄スリーブに比較して圧倒的に少ないことに重きをおいたリポートになっていますが、そこに使われている写真をみていたいだくと、低フリクションについても参考になると思います。

純正鋳鉄スリーブと摺動したピストンのスカート部にはあきらかな縦傷がはいっていてみるからにザラザラしています。一方、ICBM(R) アルミメッキスリーブと摺動したほうは画像でもきれいなのはわかると思いますが、指で触ってみるとすべすべツルツルしているんです。機会はなかなかないと思いますが、できれば一度触ってみてもらえればその違いはあきらかで、ほんとうに実感できると思います。

この違いはピストンのスカート部だけにでるわけではなく、一番大きいのはピストンリングの摩耗状態に大きな差があることです。
一般にふたつの物体が摺動する場合、片方の硬度があがればそちらの摩耗は減少する一方で、摺動する相手側は摩耗量が増加したり、ダメージを受けたりするのではないか、と想像されるのは無理のないことです。メッキの硬度をおつたえするとそのようにご心配になるかたもおられます。

ところが、実際このメッキの場合に起こる事態はそれとはまったく逆で相手のピストンリング(ハードクロームメッキリングが大半)の摩耗も著しく減少するんです。

これはひとつにはメッキ後のプラトーホーニングが大きな役割を果たしていることが考えられます。オイル溜まりになる谷が深く実際にリングと摺動する面が滑らかに仕上げられていることの効果です。
ただ、それだけでは原因として十分ではありません。あとの大きな理由はこのニッケルシリコンカーバイドメッキがリングに使われるハードクロームメッキとの相性を徹底的に研究して開発されたものであるということに尽きると思います。

もともとはドイツのマーレー社が開発したもので、登録商標名が「ニカジル」です。ですのでiBのものを含めマーレー社以外のメッキを「ニカジル」と呼ぶのは正しくありません。それ以外の各社のメッキはそれをさらに研究開発して進化したメッキになっています。内燃機関の内径への適用のみを目的として開発されたもので、熱と圧力を受け、一方潤滑油のなかでの過酷な摺動という極めて特殊な摺動条件に適合した圧倒的な性能をもったメッキです。

iBも過去にはこのメッキ以外のあらゆるメッキでの開発に挑戦しましたが、8年の歳月を費やしても十分な性能を持つものはみつからず、結局高価なこのニッケルシリコンカーバイドメッキを採用するに至りました。その後4年ほどを費やしてメッキ治具への投資をすすめ、あらゆるエンジン内径に対応できる体制をつくって発表したのが2016年のことになります。

以来現在ではICBM(R)(アルミメッキ化スリーブ)は600を超える納品実績を誇り、「永久無償修理」制度も実施してお客様の信頼を獲得しています。

そして、そのICBM(R)に使われるアルミメッキスリーブを完成品として単体販売を実現したのが、今回のEVER SLEEVE(R)pat.の特許ということになります。
このことについては一連のメッキスリーブのメリットの解説を終えた後に詳しくお伝えしたいと考えています。
posted by sotaro at 13:58| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月27日

EVER SLEEVE(R)pat.について 5


・焼きつきにくい

これも低フリクションにも関連はしますが、対焼き付き性はそれだけでシリンダーの一つの性能指標になり得ます。
ICBMR /EVER SLEEVERpat.に使用されているニッケルベースのメッキはピストンとの対焼き付き性能にもたいへん優れています。

写真はLOCのレース予選において点火タイミングのミスによってピストンが過熱し、見事にピストントップに大孔があいてしまった状態です。この時シリンダーの内径壁面にはわずかに熱で溶けたピストンのアルミが残りましたが、ごく僅かでペーパーで擦り落として復活し、ピストンとリングの交換で決勝は問題なく走り切ることができました。
もしこれが鋳鉄スリーブでしたら、完全にピストンとシリンダーが焼き付いてしまって、とても決勝を走ることなどできなかったでしょう。また、シリンダーはその後も最低限のホーニングをして継続使用することができました。

iBには毎月数多くのNSRシリンダーが再メッキ加工のために送られてきます。焼き付かせたので再メッキをというご依頼が多いのですが、これも実はホーニングだけをしてこびりついた溶けたピストンを落とすと、下から無傷のメッキ面が現れて再メッキをする必要がないケースも多くあります。(HONDA純正のNSRのメッキとICBMR /EVER SLEEVERpat.に使用されているメッキは同種のものです。)それほどメッキは硬度が高く、焼きつきにくいのです。


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2022年07月02日

EVER SLEEVE(R)pat.について 6

・ 優れた放熱性

放熱性についてのお話となれば、まずは各金属の熱伝導率を見てみましょう。


    物質               熱伝導率[W/(m・K)]
球状黒鉛鋳鉄(C:3.46、Si:2.72、パーライト地)    20.1
アルミニウム6061-T6              170

蓄熱することで知られているステンレスSUS304が16.0です。
熱を通さないので、魔法瓶などにも使われますよね。鋳鉄の数値はそれに近いものです。
このように鋳鉄は金属の中でもかなり熱伝導が良くないことがわかります。

一方、アルミよりも熱伝導が良い金属というと、銅398、銀427、金315くらいしか見当たりません。
アルミは金属の中でもそうとう熱伝導に優れた部類です。
実際に電子部品などの放熱用のフィンなどもアルミで作られているものが多くみられます。

ちなみに
アルミニウム砂型鋳物材AC4C(Si:7、Mg:0.3) 151
鋳造のアルミよりもA6061の方がさらに熱伝導に優れていることもわかります。


熱伝導率の低い金属は、摩擦熱によって、焼付き、かじり等を起こしやすくなります。

シリンダーヘッドに次いで、エンジン内部の熱を強く受け止めるシリンダースリーブの放熱性が高いことは
エンジンがその熱を外に逃すにあたってたいへん重要であることは言うまでもありません。
燃焼室内の爆発による熱、特にピストンが受け止めた熱はピストンヘッドからピストンリングを経て接触するシリンダースリーブに伝わって、
そこから外へと伝わるのですから。

そこに熱伝導の悪い鋳鉄の壁を設けてしまうことはピストンの冷却を大きく阻害することになります。にも関わらずシリンダー内径に熱伝導のよくない鋳鉄スリーブを採用する必要性はどこにあったのでしょうか。

確かに20世紀にはまだアルミ表面に密着して剥離を起こさず、硬度が高く耐摩耗性の高いメッキの技術がなかったのでそれは止むを得ないことでした。でも、21世紀の今は違います。何も放熱が悪く重くて摩耗する鋳鉄をエンジンの内部に持ち込む理由などないのです。
実際、現在新車で生産されているスポーツバイクは各社全てアルミメッキシリンダーになっています。
鋳鉄スリーブを採用すると言うのはせっかく放熱性のいいアルミシリンダーの中に分厚い魔法瓶を仕込んでしまうようなものではないでしょうか。

IMG_8843.JPG

写真は一昨年製作したHONDA 1300(四輪車)のエンジンです。
鋳鉄スリーブを削り取って、アルミメッキスリーブ化しました。

このエンジンの開発時、本田宗一郎さんは「水冷よりも空冷の方が理に適っている」という信念のもと、1300ccの乗用車の開発に腐心されました。ただ、発表されたクルマの市場での評価はあまり芳しいものではなかったようです。

エンジン冷却のために複雑な2重のフィン構造と鋳鉄スリーブを持ったエンジンは重く、そこまでしても安定した冷却はできなかったと言うことです。

#もし、今iBが持っているEVER SLEEVE(R)pat.の技術をタイムマシンに乗って宗一郎さんに提供することができたら!

雷鳴のような轟音がとどろき、視界が開けると
タイムマシンから降り立った男が叫ぶんです。
「宗一郎さん、僕たちの夢を叶えるスリーブができました!!」

軽くて放熱性に優れ摩耗が圧倒的に少ないEVER SLEEVE(R)pat.は大いに宗一郎さんのお役に立てたのではないか、と思うとなんだかワクワクするような気持ちを止めることができません。もちろん、これは叶わない夢ですけれどもね。

でも、あなたのエンジンにEVER SLEEVE(R)pat.をお届けすることは現実にできるんですよ。(^o^)
posted by sotaro at 10:51| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月19日

EVER SLEEVE(R)pat.について 7

・膨張率の均一化

比較的地味なトピックと思われがちなこの膨張率の均一化という問題ですが、これが実に多くのエンジンの課題を解決してくれる重要な問題なんです。iB自身もこのことの本当の意味に気づいたのはすでにICBM(R) の生産・納入がかなり進んだ後のことでした。
シリンダーバレル本体とスリーブが両方ともアルミになり、オールアルミのシリンダーであるということは想像される以上にエンジンというものにとって重要なことだったんです。

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まず第一に解決された課題はZ1/Z2などの元々の鋳鉄スリーブの場合に発生するシリンダーバレルとスリーブの間に永年の使用で隙間ができてしまう、という問題です。
これはすでによく知られた問題点で、ボーリングのためにお送りいただいたシリンダーがiBに到着するまでに緩んでしまって抜けているというようなことは頻繁にあります。また抜けていない物でもちょっとプラスティックハンマーで叩くと抜けてしまいます。このようなものをそのままボーリングやホーニングをすると加工の際の力でスリーブが回ってしまって危険なため、加工することができません。
なんとか加工ができても、エンジンが稼働して熱がかかるとシリンダーバレルと鋳鉄スリーブの間に隙間ができてしまい、熱伝導が阻害されさらに隙間が大きくなってしまいます。こうなるとスリーブは中空に浮いている状態で上部のツバの部分だけで支えられる状態になりますから、熱伝導ができず、スリーブが振動して異常摩耗が発生することにもなります。
これはすべてアルミと鋳鉄では膨張率が約倍と大きな差があることが原因ですから、スリーブをアルミにしてしまえばまったく発生するはずがないトラブルです。
重くて摩耗する鋳鉄スリーブを選ばなくてはならない理由がなにか他にあるのなら別ですが、アルミメッキスリーブが入手できる現代において鋳鉄スリーブを選ぶ理由はコストの僅かな差以外にはないのですから、エンジンの再重要部位・心臓部であるシリンダースリーブには多少のコストをかけてもアルミメッキスリーブを採用していただきたいものです。

第二点としてはピストンとも膨張率の差がなくなることで、クリアランス変化が少ないエンジンになるということです。エンジンは始動前は冷えていて、始動して熱がかかると各部品が熱膨張します。ところが中心部のピストンが膨張率の大きいアルミで、外側を囲むスリーブが膨張率の小さい鋳鉄というのは考えてみれば最悪です。中でピストンが大きく膨張して、外側のスリーブはその半分しか膨張しない、だから大きくクリアランスをとっておかないと焼き付いてしまうわけです。一方クリアランスを大きくとれば、エンジンが温まらないうちはクリアランスが大きすぎて調子が悪い、ということにもなります。
ところがピストンがスリーブも含めてオールアルミのシリンダーの中にあるのなら、大まかにはピストンが膨張したのと同じだけシリンダーの方も膨張するのですから、焼きつきの恐れは大幅に減少しますし、エンジンが冷えていてもクリアランスはほぼ一定に保たれているわけですから、いわゆるオーバークールという現象もすくなくともこの部分に関しては発生しない、ということになります。
レースなどでは当初のクリアランス設定を限界まで小さく詰めることも可能になりますので、圧縮を逃さずその分のパワーアップも見込めるということになります。

第三点として、一部の鋳鉄ウェットライナーを採用している機種においては、エンジンが熱くなると鋳鉄スリーブを支えているアルミシリンダーバレルが膨張してしまうので、そこから冷却水漏れを起こすということがあります。画像のGPZ900Rや4輪車ですがHONDA S800などがこの例になります。S800などではこれがエンジンの欠点として広く認識されているそうです。ここから水漏れが起こると止めようがないんですね。エンジンを全部分解してスリーブを抜いて対策をするのですが、それも鋳鉄スリーブではまた同じことの繰り返しになってしまいます。
アルミメッキスリーブなら、もちろんこの問題も起きません。それだけでなくウェットライナーは鋳鉄のスリーブ外径が冷却水に浸かっているのでここが錆びてしまい、この錆がいずれはラジエターやウォーターポンプなどあらゆる部分に回って悪さをすることになります。アルミメッキスリーブなら、この問題もいっさい起こるはずがなく完全にクリアーできます。

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さらに重要な発見がありました。これが第四の重大なメリットであり発見であって、この発見によってEVER SLEEVE(R) pat.(エバースリーブ)は特許をとることができました。
この点については長くなりますので、項をあらためて解説したいと思います。
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2022年07月26日

・膨張率の均一化が産んだ「EVER SLEEVER pat.(エバースリーブ)」8

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まず、エバースリーブ技術を採用して完成したICBMシリンダーはいままでのICBMシリンダーとなんら変わりがないとお考えください。

ただその製法にちょっとした変更点があります。

それは何かと言うと、先にホーニングまで完成したアルミメッキスリーブをシリンダーブロックに常温挿入してその後面研磨などを実施して仕上げたものというこの一点です。
単に工程の順番が変わっただけ、のようですが、通常鋳鉄でもアルミでも内径仕上げまで完成してからスリーブをシリンダーブロックに焼き嵌めすることはありません。なぜかと言うと焼き嵌めでスリーブを入れた後、熱収縮する際にスリーブが変形してしまうから、です。
そのため内径の仕上げは、必ずスリーブの圧入後にやらなければ精度の高いシリンダーを作ることはできなかったんです。

スリーブが鋳鉄でできていて、シリンダーブロックがアルミでできている場合にはスリーブの圧入は焼き嵌めでやるより方法がありません。
(2ストなど、一部の鋳込みスリーブは除きます。)

iBではアルミメッキスリーブICBMの開発に成功した後も、確実なスリーブ挿入法として引き続き焼き嵌めを実施してきました。

ところが!
多くのICBMを取り扱ううちに、スリーブを外さなくてはならない機会もあり、そのときにスリーブもアルミでシリンダーブロックもアルミの「アルミ同士」の場合には、圧入代がほんのわずかであってもアルミ同士が結合してしまって抜くに抜けないという事態に多く遭遇したのです。

そして、このことがある発見に結びつきました!
「アルミスリーブは挿入時の嵌合がなんとゼロでもシリンダーブロック内で遊ぶことがない!」
という驚くべき事実です。

なぜか。
それはエンジン(=内燃機関)の熱はシリンダーの内部で発生していて、一方シリンダーブロックの方は空冷にしろ水冷にしろなんらかの方法で冷やされるもの、だからです。膨張率に差がないアルミ同士の場合、熱にさらされるスリーブは膨張し、シリンダーブロックは冷やされていて膨張しない。
だからなんと嵌合代はゼロでもあるいはプラス(わずかな隙間嵌め)でも、稼働するエンジンの中ではスリーブはブロックにしっかりと抱きついて一体化しているのです。

考えてみれば、当然のことでもあります。

しかし、長年内燃機屋として鋳鉄スリーブ入替を実施してきた中では全く思い至らないことでしたし、バイクメーカーさんの仕事としてアルミシリンダーに直にメッキをするシリンダー製法を実施している間もまったく知る必要がない知見ではありました。

アルミメッキスリーブICBMを数多く手がけて初めて気づくことができた発見でした。
これもシリンダーブロックとスリーブがすべてアルミであって膨張率が均一化されたことの一大メリットだったのです。

そして、この発見が「エバースリーブ」の開発へとつながりました。

嵌合代がゼロにできるとどんなことが可能になるのか。
それは、常温でスリーブの挿入ができ、しかも挿入後の熱収縮がないのでスリーブの変形が起こらないのです!

ということは、今までの常識に反して、ホーニングまで完全に精密に仕上げたあとのスリーブをその後にブロックに挿入しても、なんら問題がないことになります。
内燃機加工の常識としては、ディーゼルのスリーブでもガソリン車でもオートバイのエンジンでも、いままでにやったことがない画期的な加工方法であり、「ホーニングまで完成したスリーブをそのまま挿入して終わり!」なんてほんとうにあり得ない加工方法なんです。

そして緩い嵌め合いのスリーブをエンジン組み立て完了までの間、軽くブロックに固定しておくためにストッパーリングを開発し、この工法によって特許を取得することができました。

これは鋳鉄スリーブとアルミブロックではできないことです。
鋳鉄とアルミでは膨張率が倍ほども違うので、先の投稿でもご紹介した通り、稼働するエンジンの中では常識的な嵌合代があっても、スリーブはブロックのなかで遊んでいるということになってしまうのが現実です。まして嵌め合いゼロなんてあり得ません。

アルミスリーブならこういう問題が絶対に起こらないばかりでなく、さらに「エバースリーブ」として完成品スリーブの販売も可能になるのではないか。

iBとしてはこの可能性に賭けてみることにしました。

様々なテストをし、嵌合代を調整しながら「エバースリーブ」の製作に挑戦しました。
その結果、技術的にはまったく問題なく「エバースリーブ」を製作することができました。
「エバースリーブ」が完成すれば、iB以外の日本全国の内燃機屋さんやそれ以外にもシリンダーバレルのスリーブ穴拡大ができる機械加工屋さんであれば、どこでもアルミメッキシリンダーの完成品を創り上げることができるようになり、今より多くのかたにアルミメッキスリーブの恩恵をお届けできるようになります。

できる限り多くの方に、いい状態のエンジンで愉しんでいただきたい。
それがiBの目指すことです。

「エンジンで世界を笑顔に!」 (株)井上ボーリング
posted by sotaro at 14:39| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月08日

・「EVER SLEEVER pat.(エバースリーブ)」が実現したこと。(シリンダーの歴史)

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シリンダーに絞ってエンジンの歴史を振り返ってみます。
まず最初に現れた量産シリンダーは鋳鉄シリンダーでした。鋳鉄というのは量産性に優れていますので、ごく初期の手作りのようなエンジンを除けば、量産でシリンダーを作るときに鋳鉄が選ばれたのは当然のことだったと思います。あらゆるエンジンが当初は鋳鉄シリンダーで造られていました。
エンジン誕生からおおむね60年代くらいまではこのタイプが主流でした。

ただ、やはり鋳鉄は重い。2輪車にとって重量が軽いということは加速性能・運動性能・燃費などあらゆる点にとって重要です。さらには放熱性なども考えると鋳鉄の次にはシリンダーにアルミ鋳物が使われることになったのは自然なことでした。これはエンジンだけに限られたことではなく、後にはフレームまで含めてアルミという素材が2輪車では多用されていきます。
それでも、アルミそのままでは内径の過酷な摺動には耐えられませんから、シリンダー全体の素材はアルミに変更するものの、内径の摺動を担当する部分だけは鋳鉄を残さなければなりませんでした。
こうして生まれたのがアルミ鋳物の中に鋳鉄製のスリーブを挿入(または鋳込み)したタイプのシリンダーです。
60年代に生まれた鋳鉄スリーブ+アルミ鋳物のシリンダーは70年代にはスポーツタイプのオートバイからどんどん普及がすすんでいきます。ハーレーのような速さや軽さを重要視しないタイプのオートバイでは80年代まで鋳鉄シリンダーが使われましたが1984年にエボリューションエンジンが登場し、ハーレーでもアルミ+鋳鉄スリーブに進化していきます。

さらにアルミに超高硬度のメッキが可能になると、シリンダー全体がアルミで鋳造された内径に、メッキを施したオールアルミのシリンダーが登場します。これは日本車の2ストロークのレーサーのエンジンに真っ先に採用されました。80年代後半のことです。

過酷なレースにおいて、まずその優れた性能が必要とされたのですね。レーザーレプリカが爆発的に売れたことで、市販車にも同じタイプのオールアルミのシリンダーが採用されていきました。ここで量産技術が確立されたことで、それから先はやはりスポーツタイプのオートバイから採用が進み、いまではほとんどのオートバイエンジンはオールアルミのシリンダーが採用されています。iBがこのシリンダー生産の過程に深く関わっていたことはみなさんご存知の通りです。

つまり、オートバイのシリンダーの進化というのはアルミ化の歴史であったということができると思います。

そしてEVER SLEEVE(R) pat.が実現したのは、歴史の中期に使われていた鋳鉄スリーブタイプのエンジンを現代のオールアルミのエンジンへとひとつ時代を進めることに他なりません。

いままで、鋳鉄スリーブの問題点、アルミメッキスリーブの美点について多くの言を費やしてご説明をしてきましたが、これをひとことで言うとすれば、EVER SLEEVE(R) pat.とそれを採用して行われるICBM(R)というメソッドは

シリンダーを一時代分進化させる「モダナイズ」の技術であった、
ということだと思います。

そして、それを現実化させたのは
「なんとかして旧車のために減らないシリンダーを創りたい。」
というiBの技術者の熱意でした。
posted by sotaro at 11:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月22日

EVER SLEEVER pat.特許の意義は「普及」

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アルミメッキスリーブの意義についてここまで多くの記事を連ね、その価値をご理解いただけるよう努めてきました。この素晴らしいスリーブについて多くの方にご理解をいただき、また実際にご自分のエンジンに採用していただきたいと願っています。

エバースリーブのカテゴリー一覧はこちらです。
http://ibg.seesaa.net/category/27755499-1.html

その普及のために IBとしては特許を取得したEVER SLEEVE(R) pat.を日本中の内燃機屋さんにまず採用していただきたいと考えています。

そして次にはバイクショップさんにご採用いただくことも大きなテーマです。


エンドユーザーさんは新しい技術や製品に関心が高く、いち早く情報を求めて採用を検討していただけるのですが、意外に業者さんは今までに慣れ親しんだ方法から離れることができないようです。

これまでの詳細な記述を読んでさえいただければ、多くの方にはご理解をいただけたのではないかと思います。
たった一つの製品にこれだけの語るべき内容があるだけでもなかなかのものだと思うのですが、実はこれでもまだ語らなくてはならない大事なことが残っているんです。

それはEVER SLEEVE(R) pat.が目指している世界です。

旧いオートバイ・エンジンというのは本当に素晴らしいものです。
これにとって変われるような物は世界のどこにも無いだろうとiBは考えているんです。

エンジンの生産の終焉が囁かれる世界の中で、我々内燃機屋は過去に作られたエンジンを未来永劫残していくという重要なミッションをこれから担うことになります。

それには鋳鉄スリーブで作られた内径をただボーリング・ホーニングして削って真円に戻すという
内燃機屋の昔ながらの工法ではあまりに不十分であることは今まで述べた通りです。

圧倒的な耐久性を含め7大メリットを誇るEVER SLEEVE(R) pat.(アルミメッキスリーブ)を採用して永遠のような未来まで、乗り物を残していく。

それにはiBだけではどうしても力が足りません。日本中の内燃機屋さんに協力していただくことが欠かせません。

そのためにiBはEVER SLEEVE(R) pat.の特許を取得して、メッキ技術やメッキ後のプラトーホーニング技術を持たない加工屋さんでも問題なくオールアルミのメッキシリンダーを製作していただけるような体制を築き上げることができました。

日本中の内燃機屋さんと力を合わせて、全てのヴィンテージモーターサイクルエンジンをアルミ化していきたいと思います。
エンドユーザー様のご理解・バイクショップ様のお取り扱い・内燃機屋さんのご協力を切にお願いいたします。


ぜひ、下記のページをご覧いただければと思います。
[EVER SLEEVE(R)PAT.
エバースリーブ(R)でiBが夢見る「永遠。」]
https://www.ibg.co.jp/web_sherpa/pg4093089.html
posted by sotaro at 14:18| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | エバースリーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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