
唐突ですが、鋳鉄スリーブとアルミメッキスリーブの優劣について私見を述べさせていただきます。
いまだに鋳鉄スリーブに優れた点があると言うことを主張される方がいますが、自分は21世紀の現在、コスト面以外に鋳鉄のほうが優れている点は全くない、と考えています。
アルミのシリンダーに鋳鉄スリーブというのは20世紀の「過去の技術」です。
ただ、コストというのは無視できない問題ですからiBでも今後ともターカロイスリーブを製作する機会が全くなくなるということはないとも思います。
鋳鉄スリーブのほうが優れる点として、エンジンブロック全体の剛性が鋳鉄スリーブを強度メンバーとして成り立っているということが挙げられる場合があります。
ですが、これは暖まっているエンジンの中では起こらない現象なんです。
ご存知のようにアルミは鋳物アルミでも鋳鉄に比べると約2倍の膨張率があります。可動しているエンジンのシリンダー内壁の温度は条件で様々ですが、230度くらいまで上昇すると言われています。
スリーブを外した状態のKAWASAKI Z1のシリンダーブロックで行った私どもの実験ではシリンダーブロックを150度まで熱すると、なんと0.3mmもスリーブ孔が拡大してしまいました。
温度が50度上がるごとに概ね0.1mm内径が拡大するというような比率のようです。
鋳鉄スリーブを大きな嵌め合い代を持って焼き嵌めをしてあっても、稼働しているエンジンの中ではスリーブは遊んでしまっているんです。
Z2/Z1などの40年以上も経過した純正スリーブなどは、冷間でも抜けるほど嵌め合いがゆるいので、これが完全に遊んでいることは既によく知られています。いくら新品の削り出し鋳鉄スリーブを大きな嵌め合いで圧入しても、このことは変わらないとiBでは考えています。
ところがアルミメッキスリーブの場合はどうでしょうか。アルミ同士では膨張率がほぼ変わりません。そして、内燃機関であるかぎりまず熱せられるのは内側のスリーブのアルミです。このためエンジンがかかるとまずスリーブが膨張して、温度が上がるほどスリーブとシリンダーブロックは強固に結合していきます。鋳鉄スリーブが熱がかかると遊んでしまうのとは逆の現象です。
このためにシリンダーブロック全体の剛性はオールアルミのアルミメッキシリンダーのブロックのほうが鋳鉄スリーブ焼き嵌めブロックよりも上になるんです。
もちろん単純に同じ厚さのスリーブ同士を鋳鉄とアルミで比べれば鋳鉄のほうが硬いに決まっていますが、こと稼働しているエンジン内のブロック剛性となるとアルミのほうが上なんです。これがわかってない方が多いです。
実はこのことについて有名なM社さんの技術者の方と情報交換したことがあります。
「あ、それ、間違いないです。オヤジもよく言ってました。(剛性に関しては)『動いてるエンジンの中じゃ、鋳鉄スリーブなんてナンも仕事してへんで。』って。」ということでした。
iBでは鋳鉄スリーブでは最低肉厚1.5mmのスリーブまでは製作します。(本当は2mm確保したいところですが。) 一方アルミでは最低肉厚を3mmとしています。肉厚3mmあれば爆発圧力や内外からかかる力に対してスリーブ単体で十分な剛性が確保できます。
計算上は鋳鉄の1.4倍の肉厚を確保すれば同等の剛性があるのですが、余裕を持って3mmとしています。薄肉スリーブについてはコストを言わなければ7N01のアルミを使えば鋳鉄と同等の厚みも実現できます。メッキの密着については技術的にはすでに解決しているんですが、これまたコストの関係でまだ7N01の受注例はありません。
3mmのアルミスリーブは単体で十分な剛性を持っています。それがブロックと完全に密着してバックアップされていますから、もうなんの不安もありません。
鋳鉄スリーブはスリーブ自体の剛性はあってもシリンダーブロックとの膨張率の差でスリーブが踊ってしまうと、振動して異常摩耗を起こします。またブロックとの隙間が空くと元々悪い放熱性が一段と悪化します。
すでにアルミメッキスリーブが入手できる現代に於いて最高の品質を求める場合、ひとつも長所のない鋳鉄スリーブを選ぶ理由はありません。
現代の二輪車用エンジンの多くはアルミメッキシリンダーです。アルミメッキが優れているからに他なりません。
新しいブロックはそれなりの設計がされているが、昔の設計の鋳鉄スリーブをアルミに置き換えても剛性が出ないというのも、当たっていません。既にご説明した通りアルミスリーブは熱を受けてブロックに完全に密着するので、遊んでしまう鋳鉄スリーブより熱間のブロック剛性が上がります。
むしろ現代のブロックより昔のもののほうが一般に肉厚にできています。(駄肉が多いともいえますが、そのおかげでチューンナップの余地が大きいのも事実です。)
またZなどのシリンダーブロックで剛性が低いのはカムチェーン穴の前後端です。あそこは前端から後端までの大穴が開いていて、前後端の壁にしか部材がないですよね。ブロック全体を曲げる力をかければ、あそこから真ん中で折れる感じになりますが、スリーブの入るあたりは肉もあり形状的にも剛性の問題はありません。
スリーブを焼き嵌めしたってカムチェーン周辺の補強にはなりません。
この辺りも考えてみればわかることです。
つまり、スリーブの特性としてはアルミメッキスリーブは非の打ちどころがないのです。
加えてブロック全体の剛性などという話になっても、やはり鋳鉄スリーブに優位性はないことがご理解頂けたかと思います。
このようにアルミメッキスリーブはあらゆる点で鋳鉄スリーブを凌駕しています。
軽量・放熱のよさ・滑りが良い・焼き付きにくい・膨張率の均一化・圧倒的な耐摩耗性・おまけに錆びない・ピストンリングの摩耗も抑えられるなどあらゆる点で理想のシリンダーになります。
もちろんブロック全体の剛性の件も含めて、です。
どうぞ、安心してICBM(R)(アルミメッキ化スリーブ)をご用命ください。m(_ _)m
ICBM(R)には【永久無償修理】がついています❣️
そして、iBでは全国の加工屋さん・内燃機屋さんでアルミメッキスリーブを完成加工していただけることを願って、アルミメッキの技術を囲い込まず、開放することで、全ての旧車が良い状態を末長く維持していただけるよう、「EVERSLEEVE(R)pat.」(特許取得済み)を発売開始しています。どうぞ、ご利用ください❣️ m(_ _)m