2020年02月27日

スムーズなエンジンという理想

昨日もお近くのGPクラフトさんにKH400-ICBM(R)を納品させていただきました。

H1/H2のICBM(R)は大好評をいただいています。KH400などのミドルトリプルについても同じように評価していただけるようになってきました。
もうみなさんご存知のようにトリプルのエンジンはどれもポートが大きく、ピストン リングやピストンスカートがポート内に飛び込んでしまって異常摩耗を起こします。それに対してポートに柱を立てたICBM(R)はその欠点を完璧にカバーすることができるというのが高評価の理由です。

静かに・スムーズに回るようになったICBM(R)採用のエンジンはその状態がほぼ永遠に続きます。物凄い硬度のメッキのおかげです。慣らし運転が終わる頃には音が出始めてしまう、などというトリプルの伝説とは無縁になるんです。

トリプルのエンジンはジャンジャン・キンキンと音が出るのが当たり前でそういうものだと思って乗ってらっしゃるオーナーさんも多いとか。
中にはICBM(R)採用のエンジン音を聞いて、これでは寂しい、「カワサキらしくない」などとおっしゃる方もいるそうです。

でも、この音がどうして発生しているのかをちょっと考えていただきたいんです。
例えばリングが柱のないポートにはみ出してしまいます。そして、それが綺麗に押し戻されればジャンジャンなどという音はするはずがないのですが、リングが内径側にうまく押し戻されずにポートの淵に当たって、叩かれながら回っているんですよ。
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異常摩耗が見られる350ssシリンダーのINTAKEポート。

当然その時にリングも痛みますし、ポートの側も削り取られていきます。ちょっと走ったトリプルシリンダーのポートの上下にはすぐにそれとわかる傷がつき、摩耗が始まっていきます。こんなひどい回転抵抗がエンジンの中で起こっていいはずがないではないですか!

翻ってiB得意のプラトーホーニングのことを考えてみたいと思います。
今ではすっかりおなじみになったプラトーホーニングはその名の通り、リングが摺動する面(高原部分)では通常のホーニングの1/10ほどの滑らかさに仕上げられています。
一方でその分のオイル保持を可能にするために谷の部分は通常よりも深く谷がつけられています。

このようにするためには通常1行程で終わるホーニングを谷を深くつける1行程目と高原部分を滑らかにする2行程目に分けて加工する必要があり2倍以上の工数がかかります。しかもその両方がうまい具合に粗さが出た時に内径の寸法がちょうど狙った寸法になるようにするのには、超絶テクニックが必要なのがお分かりいただけるかと思います。
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GPクラフト様向けKH400-ICBM(R)納品書添付のプラトー成績書

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通常のホーニングではこのようにピストンが摺動する面(上側)も尖った形にホーニングされます。

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プラトーホーニングでは谷はしっかりと深くピストンが摺動する面は通常の1/10ほどの滑らかさに仕上げます。

そうまでしてどうしてプラトーホーニングを実施するのか。それは「滑らかな・スムーズなエンジンを作るため」その一言に尽きます。
抵抗が少なく、スムーズに回るエンジン。それはエンジンの理想でしょう。パワーが出ることも大事ですが、せっかく発生したパワーがエンジンの外部に伝わる前にエンジン内で無駄な抵抗やうるさいノイズと化して消えていったのでは何の意味があるのかわかりません。
2ストエンジンにせっかく巨大なポートを与えてもそこがパワーを食ってしまうのだったら、燃料が無駄に消費されるだけのうるさいエンジンにしかなりません。
おまけに壊れやすい!リングノイズやピストンスラップノイズがでている状態は焼き付きや異常摩耗の原因にしかなりません。

70年代以前から80年代後半くらいまでの2ストエンジンはトリプルばかりでなくどれもこのような問題を抱えています。大パワーを狙った大きなポートがなんとクランク軸に直角な方向に大きな口を開けています。本来そこはピストンの首振りを抑え、ピストンをスムーズに往復運動させるためのシリンダー内壁がなくてはならない場所なのに。

ですから、その位置、すなわちシリンダーの前後方向の真正面・IN/EXポートのド真ん中に柱を立てるというICBM(R)の手法は極めて真っ当な2ストロークエンジンの根本原理に適った改善手法なんです。このように有効なやり方は他には2つとありえない手法だと言っていいでしょう。

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同じくGPクラフト様向けKH400-ICBM(R)の内径ポート。EXポートには柱が建てられピストンをしっかりと受け止めます。
柱には0.08mmほどの深さに逃し加工がマシニングセンターで入れられ、手仕上げで滑らかに仕上げられています。
ポート面取りやプラトーホーニングの滑らかさも感じ取っていただけるのではないでしょうか。

このように考えてくると、リングノイズやピストンスラップノイズをエンジンの個性と捉えてそれを好ましいもののように評価することにはそうとうな違和感を感じざるを得ないのもご理解いただけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

やはりエンジンの理想は「スムーズなエンジン」だと思います。精度良く機械工学の理想に適う形に加工され丁寧に組み立てられて、
「静かに・スムーズに回る(長持ちする)エンジン」
iBは、そこにこそエンジンを愛するものにとっての理想の姿があるのだと信じています。

[REINCARNAITION]
旧いオートバイエンジンの再生を業とするiBの理想は大パワーを狙ったチューニングでも奇を衒ったカスタムでもなく、
オリジナルエンジンの良さをそのまま残して当時解決できなかった旧いエンジンの欠点だけを取り除く「モダナイズ」にあります。


posted by sotaro at 13:28| 埼玉 ☔| Comment(0) | REINCARNATION | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月15日

(株)井上ボーリング iB の決意。

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Zのヘッドはアルミ素材の劣化に起因する多くの問題を抱えていました。
今回、KAWASAKIはそこに金型を新規に製作してまで、ヘッドの再生産をおこなうことによって、問題の解決を提案してくれたのです。

Zのシリンダーはこれまた素材の劣化ともともとのスリーブ嵌合代の問題もあり、オリジナル純正スリーブは限界を超えています。
そこにiB(株)井上ボーリングはICBMアルミメッキスリーブ化によって根本的に問題解決することを提案しています。

さらにクランクについてはコンロッドキットを開発することによって、クランクシャフトを完全修復する方法を提案したいと考えています。

このようなことによって、今Z2/Z1のエンジンは完全修復を実現できる大きなチャンスを迎えていると思います。これは、今まではできなかったことなんです。

KAWASAKIのヘッド再生産の英断にあらためて拍手を送りたいと思います。
iBとしてはこの機会に多くのかたがZ2/Z1のエンジンを良い状態にすることに取り組んでいただきたいと強く思っています。

残念なことに一般に言われることとして、Z1などの輸入・販売をする業者が外観だけをきれいにして、エンジンには手を入れないまま高額で販売してしまうということが業界の悪弊として言われることがあります。

たいへんに残念なことです。

旧いオートバイを購入するユーザーの方にもやはり高い見識を持って、良いバイクとそうでないものを見分けていただければ、と願うばかりです。
それが一番大事なことだと思います。

それが本当にできることならば、いずれは悪質な業者は淘汰されていくでしょう。しかし、道は遠いと言わざるを得ません。

それに、ユーザーにばかりその重い任をになってもらうだけでいいのでしょうか。そんなはずはありません。
本来は業者の方が変わらなくてはいけないのです。

ただ、世の常として業者が利益を最大化することに走るのを止める方法はないと思います。

では、どうすれば良いのか。

iBはこう考えています。
「手を抜いて高く売る」という商法よりももっと正しい方法で利益があがるビジネスモデルがあり、それを示せればいいのではないか。

ですよね?

でも、ほんとうにそんなことができるのでしょうか? 

論より証拠、わかりやすいように例をあげたいと思います。

iBにとある業者さんがヘッドのネジ修正やシリンダーのフィンかけばかりをご依頼になっていました。ネジ修正のついでに一応ガイドやバルブシートの状態をチェックして、「これは直さないとダメですよ!」とご提案をしても始めはまったく取り合っていただけませんでした。そしてそのヘッドの外観はきれいに再塗装がしてあります。

iBは諦めずに、その業者さんにも内燃機加工をお勧めすることをやめませんでした。それが本来の仕事ですから、当然です。
ところが、ある日ボーリングの仕事をお受けする機会がありました。その次にはヘッド加工もご依頼になりました。いまでは多くの場合はきちっとした内燃機加工をやらせていただけるようになりました。
おそらくエンドユーザーさんにも喜んでいただけたのでしょう。

また、別のZを得意とする業者さんは、以前はZの欠点であるスリーブの緩みがでたシリンダーでのボーリングのご依頼に、iBが鋳鉄スリーブ入れ替えをご提案しても、

「回り止めにイモネジを打ってでも安くボーリングでやってくれ、それでなにも問題になったことはないから!」
と聞き入れてくれませんでした。

iBはそちらからのお仕事はもう受けなくくてもいい、という覚悟で、
「回り止め加工はいっさいやりません!」とすべての業者さんに対して宣言してお断りをしてしまいました。

それから数年どうなったかと言うと、そのお客様は現在では鋳鉄スリーブ入れ替えどころか、ICBMのご依頼を繰り返し発注していただけるようになっています。



これはどちらもほんとうのことです。

つまり、そういうことなのではないでしょうか。


iBとしては地道にこのような努力を続けることが、いつか日本の旧車の世界を少しづつよくしていくことにつながるのだろう、業界を健全化できればそれだけ業界とともにiBも末永く共栄していけるはずだ、とそれを信じて仕事をしていきたいと思います。

気の長い話ですみません。(^^;;;;;;

でも、iBは今後ともこの信念に従って、優れた加工技術を業界に提供し続けていくことに全力で取り組みたいと思います。
どうか、応援のほどよろしくお願い致します。m(_ _)m



多くの方が(エンドユーザーさんもバイクショップさんも)Z2/Z1 ヘッド再生産のこの機会に、Z2/Z1 のエンジン全体に優れた加工を採用していただけるよう、願って止みません。

だって、エンジン絶好調の銘車Z2/Z1で、いつまでも愉しく走り続けていただきたいんです。

「エンジンで世界を笑顔に!」 iB (株)井上ボーリング



posted by sotaro at 10:37| 埼玉 ☔| Comment(0) | REINCARNATION | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月08日

モーターショウ 2019

REINCARNATION カテゴリー 2つ目の記事です。

KAWASAKIがあのZ2/Z1のヘッドを再生産するというニュースがあり、どうしても実物を見たくてモーターショウに行ってきました。
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KAWASAKIのヘッド再生産はほんとうに素晴らしい試みだと思います。感銘を受けました。
KAWASAKIのヘッドに関しては別に特設サイトを立ち上げて詳しく解説していますので、ぜひそちらをご覧ください。
http://sotaros.juno.weblife.me/head/

その日は大雨が予想されていたので、他は何も見ず帰ってしまいました。

こちらはクルマを発明したのは我々だと自負し、CASEというクルマの未来を定義するような提案を世界に向けて行ったメルセデス・ベンツの展示。
多くの世界的なメーカーがこの提案に呼応する開発をしています。

先日一緒にウェイクボードに行ったEX-iB Ladyの悠愛さんがメルセデスのコンパニオンを務めていたそうです。
(画像は悠愛さんのインスタグラムからいただきました。)
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ところで、今回のモーターショウはいままでとだいぶ趣が変わったようです。
クルマやバイク好きの人だけのためのイベントではなく、ごく一般の多くの方々に楽しんでいただけるようなイベントになったようです。
キッザニアなど子供たち向けのイベントの開催などにそのことがよく現れています。

このところ観客数が減少してきているということもあり、またクルマ社会の未来が大きな変化を迎えているということを受けてのことでしょう。
僕にもこの趣旨は理解できますし、いいことだと思います。

一方、昔のモーターショウの熱狂を知っている者としてみると、ちょっと寂しい感じもします。
でも過去にしがみついていても仕方がないですよね。

今回のモーターショーのテーマが「未来」なのだそうです。僕はこれはこれでいいと思います。
(そんな中でもHONDAは過去のCBやF1、KAWASKIはメグロ・W1などの過去のバイクなども展示しているようですが)

iBは内燃機屋つまりエンジンが専門ですが、電気化するクルマ社会の未来を少しも恐れていません。
自動車会社が描くような未来は間違いなくやってくるでしょう。僕はそれを歓迎します。

でも、その未来に僕たちが目撃することになるのは、20世紀的な意味でのクルマやオートバイの終焉、になるはずです。
僕はこのことを悲劇的な意味を込めて言っていません。

そのときこそ、iBが以前から主張している輝かしい「機械式バイクの時代」が到来するのだと考えています。

安価で正確なクォーツ時計の出現以降、かえって機械式時計はその魅力を高く評価されることになりました。
同じことが乗り物の世界でも間違いなく起こるだろうと思います。
その時に評価されるのは機械メカニズムの持つ「永遠性」です。

特に2輪車という実用性よりも趣味性が尊ばれる乗り物の世界においては、電気オートバイではなく、
ホンモノのオートバイである「機械式バイク」が高尚な大人の趣味の対象として、アンティークな時計のような地位を乗り物の世界の中で獲得していくだろう、、、。
むしろ僕はそんな未来が愉しみでしかたがありません。








posted by sotaro at 12:05| 埼玉 ☔| Comment(0) | REINCARNATION | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月12日

REINCARNATION 輪廻・転生

REINH&L.jpg
IBの新しいキャンペーンです。

旧いエンジンを現代に蘇らせる。その想いをフォトグラファー井上演氏の写真に託しました。
モデルはIB LADY 多衣子さん。

「何かが生まれ出てくる」力にに満ちた写真です。

旧いオートバイのエンジンを直すのに当時の部品製造の技術的な難点があるのを知りながら、ただ往時の技術のまま再加工するだけ、という内燃機加工のあり方にiBは納得ができません。

・例えばZ1/Z2などの純正鋳鉄スリーブはシリンダーブロックとの嵌め合いが甘く、シリンダーの中でスリーブが踊っている状態です。
これをただボーリングするだけで再利用するのでは良い結果が得られるはずがありません。
放熱もできず、磨耗が進んでしまいます。

これにはICBM(アルミメッキスリーブ)を採用することで膨張率が均一で軽く・放熱がよく・滑りがよく、なにより圧倒的な耐摩耗性を誇る理想のシリンダーに作り替えることができます。

・例えばH1/H2やミドルトリプルなどでは、大きすぎるポートのせいでリングやピストンがポートに飛び込み異常磨耗を起こし、雑音の多く抵抗だらけのエンジンになり、ボーリングをしても慣らしが終わる頃にはリング音が始まってしまいます。

この場合にはやはりICBMでアルミメッキ化すると同時にIN/EXポートの中央に柱を立てることで、このような異常磨耗を完全に回避できます。

・例えばゴム製のセンターシールが抜けてしまうという欠点を持つNSR250RのエンジンにはiBがLABYRIと名付けた非接触の金属製ラビリンスセンターシールを使えば、永遠に磨耗しないセンターシールを実現できます。NSRファンの皆さんからは圧倒的な支持をいただいております。

このように当時のエンジンの持つ欠点を克服するような技術を投入することで、ノーマルスペックでもオリジナルより遥かにスムーズに綺麗に回るエンジンを創ることはできる。
このような考え方をiBでは「モダナイズ」と呼んで推奨してきました。

このたび、このような数々の技術・考え方をさらに多くのかたにご理解いただくために、この新しいキャンペーン"REINCARNATION"を起動しました。
これからあらゆる機会を捉えて、いままで以上にiBの哲学を発信していきたいと思います。

ぜひ、応援よろしくお願い致します。


posted by sotaro at 14:06| 埼玉 ☔| Comment(0) | REINCARNATION | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする