2017年04月21日

H2R-ICBM(R)シリンダー完成!

OVER RACING佐藤健正会長のご依頼により加工してきたKAWASAKI H2Rのシリンダーがついに完成しました。

H2Rと言えば当時世界最速を誇った70年代のレーサーで、昨年世界最速記録時速400km/hを出したというNINJA "H2R"のネーミングもこのバイクからとられているのだろうと思います。
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H2Rレーサーの詳細はこちらなどご参照ください。
http://www.mr-bike.jp/feature/zrx/007/06.html

そのH2Rを健正さんが入手され、クラシックバイクレースLegend of Classicに出場されるにあたって、iBにシリンダーのICBM(R)化をご依頼くださったんです。以前にもH2-ICBM(R)をお納めして高い評価をいただいたことが今回のご用命にもつながったものと思います。

当時世界最速のバイクだったH2、ただそのシリンダーには異常磨耗・ピストンの首振りなどの欠点がある。
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画像はH2の偏磨耗の状態です。

それをiBの技術ICBM(R)なら解決することができる!
かつての世界最高のエンジンにさらに現代の技術を投入することで世界最高のシリンダーをつくることができる!!
iBはこんな機会に恵まれたんだ、と思いました。なんと光栄なことでしょうか。

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H2Rスリーブを削り落としたところ。

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H2Rには市販のH2と違って、もともとINTAKEにもEXHAUSTにもちゃんと柱がたっているんです。
柱が必要で有用なことは当時のKAWASAKIも認識していたことになります。

H2R-ICBM(R)では柱はきちっと再現し、さらにEXの柱にはiBの得意技術「柱の逃し」も実施してあります。
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完成したシリンダーはすでにOVER RACINGさんにお納めしてあります。
4月のLOCには間に合いませんでしたが、このあとのいづれかのレースでデビューを果たすことになります。いまから楽しみで仕方がありません。

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H2R-ICBM(R)の製作に関わった全員で記念に写真を撮りました。
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このシリンダーを作ることができたことは、今後のiBにとって大きなエポックになるのではないかと考えています。

「世界最高のシリンダー」その定義はいろいろとあり得ると思います。
でも、当時世界最速だった市販バイクのH2そしてレーサーH2R。そのシリンダーに最高の技術を投入した今回のH2R-ICBM(R)もある意味世界最高のシリンダーといえるのではないか。iBはそう考えています。


今後、この技術をさまざまな2ストシリンダーを高耐久化し、軽量・放熱性・すべり性・焼き付きにくさに優れた理想のシリンダーを投入することで、とかく耐久性に劣ると考えられがちな2ストバイクそのものの価値まで高めていけるのではないか。

無謀な試み。そうなのかもしれません。でも、、、、。
かつて2スト好きが高じて「2スト水素バイク」まで創ってしまったiBが、今度は世界一のシリンダーを創ってしまいました!

絶滅危惧種である20世紀の遺産2ストバイクを未来に残していくために。
iBはICBM(R)の技術をできるかぎり多くのバイクに採用していただけるよう、努力していきたいと強く願っています。

2ストロークファンの皆様の応援を切にお願い申し上げます。m(_ _)m

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2016年12月16日

ポートの柱がなくなった理由

H1の初期型のシリンダーはINTAKEポートに柱が立っています。デュアルポートと呼ばれていたようですね。
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今回のH1/H2-ICBMR ではINTAKEの柱があることの価値を主張しているわけですが、INTAKEポートの柱はなにもiBの発明でもなんでもなくて、最初はちゃんと純正シリンダーのポートにも柱はあったんです。
当然の疑問ですが、それでは「なんでカワサキはポートの柱をやめてしまったんだろうか。」ということになりますよね。なにか柱があると性能や品質に問題でもあったんでしょうか。

この理由はなんといっても、この柱を作ることは当時の鋳造技術的に無理があった、ということに尽きると思います。

iBは以前モンキーのシリンダーの鋳造を外部に依頼してやっていました。実はその鋳物屋さんには往時H1/H2のシリンダーの鋳造をやっていた帝国ピストンリングさんの担当者だったかたが移籍していらしたんです。そして、その当時でもすでに昔話になっていたH1/H2の鋳造の苦労話しをしてくれました。「あれは歩止まりが悪くてね〜!」というわけです。

つまりあの細い柱の部分に溶けた鋳鉄の「湯」が流れ込んでいく、これがうまくいかないということなんです。それはそうですよね。他の部分にくらべてあきらかに細長い柱の部分に湯が流れ込みにくいだろう、ということは鋳造にはシロートの僕らが見てもわかります。ホウアンを変えてもオシユを変えてもどうしてもうまくいかない。一方後期型のノドチンコのような形状だったら、細いところがなくいかにも湯が簡単に流れ込みそうな形状です。なんとか鋳造をはじめたものの、どうしても良品率があがらなくて、とうとう途中で柱を諦めてしまった、というのが真相だろうと思います。

そしてそのかわりに幾らかでも飛び込みを減らす目的であの「ノドチンコ」を設けたんですね。でも、結局柱のようにはピストンスカートの飛び込みを防ぐことができなかった。こう考えるとその後の機種でも柱が立てられなかった理由も納得できるのではないでしょうか。やりたかったけど、できなかったんです。
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iBはそのH1/H2のシリンダーに独自の技術で柱をたてることにしました。ICBMR はアルミスリーブをムクの丸棒から削り出してポートをも造り出します。そのときに柱がついた形にポートを削るだけでいいいのですから鋳物屋さんが苦労されたような問題はいっさいないんです。そしてそこには前回も書いたように超高硬度のメッキがのっています。これは当時の技術者たちが望んでもできなかったことを現代の技術で実現しているのだ、と言えるのではないでしょうか。これがiBが目指してきた「モダナイズ」の究極の一例といっていいと思います。旧いエンジンにも現代の技術を投入することによって、チューンナップなどしないでノーマルスペックのままでも、きれいによく回り耐久性のあるエンジンが作れるのではないか、それがiBが目指したチューンナップでもレストアでもリペアでもない「モダナイズ」なんです。
メッキのシリンダーは本当に優れたシリンダーなんですよね〜。現在では販売される多くの機種にメッキシリンダーが採用されているので、そこまでメッキの美点が強調されることはありませんが、鋳鉄スリーブ内径を持つシリンダーに比べると、ほんとうに理想のシリンダーと言っていいのがアルミメッキシリンダーなんです。

さて、連日H1/H2-ICBMR の話題でお騒がせしました。ひとまずこれで切り上げたいと思います。H1/H2-ICBMR はiBが12年前に開発を始めてついに完成した現時点でのICBMR 技術のひとつの頂点になると考えています。
ぜひH1/H2オーナーの皆様には採用を真剣に検討していただきたいと思います。それだけの価値有る製品になっていると信じています。よろしくお願い致します。
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2016年12月15日

H2-ICBMR 柱付きスリーブ(INTAKEのみ)

さて、これがそのH2-ICBMR 柱付きスリーブ(INTAKEのみ)です。
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もちろんアルミメッキ以前に鋳鉄ではすでに製作実績はありました。でも、鋳鉄でもアルミメッキでも2ストスリーブを製作する手間というのはほとんど変わらないんです。むしろ鋳鉄のほうが最後にリューターでポート合わせをする際にはアルミ地よりは鋳鉄のほうが硬いのでたいへんなくらいです。メッキのコスト分だけはICBMRのほうが高価にはなりますが、せっかく2ストスリーブ製作までやるのであれば、これからはICBMRのほうが絶対におすすめできると思います。
柱がたった分だけポート面積が小さくなりますので、その分だけサイドを幅を広げるのとハート型の部分を細くけずることで、もとと同じだけのポート面積を確保しています。
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1番最初は柱なしで製作しお納めさせていただきました。これでもいまのところメッキの硬さのおかげで磨耗は発生していないようです。
ここでメッキの硬さについてご説明しておくと、ビッカース硬度という比較的硬いものを測定する硬度の規格で言うと、鋳鉄の硬度が45から硬いもので140程度のようです。それに対してICBMR のメッキはニッケルの地の部分でビッカース硬度が450とかなり硬くなります。そのうえメッキの中にシリコンの粒子を混入させてあり、このシリコンの粒子はビッカース硬度がなんと2,000!ということで、圧倒的な硬度を誇ります。このシリコン粒子が最後まで磨耗の最前線にあって、ニッケル地がわずかに磨耗してもこのシリコン部分ががんばっているので、内径の寸法変化には至らないということなんです。
昨年6万キロを走行したYAMAHAのセローのエンジンのシリンダーを測定させてもらう機会がありましたが、ほとんど誤差の範囲程度しか磨耗していませんでした。(直径で5μ程度)ほんとうに「減らない」と言っていいほど硬いのが現在のメッキシリンダーなんです。
さらに前回ご説明したように現在はINTAKEポートに柱付きで納入を開始しており、さらにiB得意のEXHAUSTポートに柱の逃がし付きの開発を始めたところです。これが完成すれば究極のH1/H2シリンダーということができると考えています。
H1/H2というのは当時世界最速を誇る市販車であったということです。日本が第2時大戦後世界にもういちど経済で進出していくときの尖兵の役割をはたしたのが、車や電化製品に先立って世界を驚かせた日本製のモーターサイクルであったと思います。
そのなかでもこのマッハが世界に与えた衝撃というのはけして小さいものではなかったはずです。その世界最高だったバイクの弱点をカバーできるある意味世界最高のシリンダーをいま僕たちは造ろうとしているのだと思います。大げさでしょうか。いえ、僕はそうは思いません。マッハを愛するオーナーのみなさまと一緒にこれからiBはぜひ世界最高のシリンダー作りに挑戦したいと考えているんです!(^o^)15181264_1545539805461382_2449264154092639762_n.jpg

このあと「2ストマガジン」の後藤編集長と一緒にH2-ICBMR のシリンダーは来春のTOTに向けてEXHAUSTポートの形状に工夫を重ねていきます。高出力と高耐久性を兼ね備えたシリンダーをぜひ完成させたいものだと考えています。
次回は放熱性など硬度以外のICBMR の特長についても付け加えさせてください。(^^)
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posted by sotaro at 08:27| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | H1/H2-ICBMR | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

ポート上下の異常摩耗対策

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上はH1のINTAKEポートの状況です。
やはりポートの上下が激しく削れてしまっています。
ボーリングしたものの黒い部分は削れ過ぎていて凹んでいるので、
銀色の部分のように刃物があたりません。

この凹みはやはりピストンリングがポートに飛び込んで上下するので、ポートの上下が削れてしまうということだと思います。

一方、下はHONDA系シリンダー(機種は内緒)のEXHAUSTポートの写真です。
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ホーニングも終わってクロスハッチがついています。そしてみていただきたいのはH1よりはるかに左右に広がっているEXポートとその中央に立っている柱(ブリッジ)、さらにはその周囲の楕円状にグレーになった部分=柱の逃がし加工の状況です。

EXポートもINポートも大きい方が一度にたくさんの混合気を吸い込みまた吐き出すことができます。このことによって間違いなく2ストエンジンの出力は向上します。
でも、むやみにポートの穴を大きくすれば、リングやピストンスカートがポートに飛び込んでしまう。H1/H2が抱えているものまさにこの問題です。

以前は2ストのポートの大きさは最大でもボア(内径サイズ)の67%以下にしなくてはならない、と言われていました。
リングなどの飛び込みを回避するためです。ところがH1/H2のポートはちょうどこの67%くらいあるんです。そのために写真のような異常磨耗が発生してしまうんですね。一方HONDAのシリンダーの方はそのような問題は起こりません。それは真ん中に柱が立っているためにリングなどの飛び込みが起こらないからです。仮にポートの幅を100%まで広げても真ん中に柱があれば、片方のポートの大きさは柱の幅を差し引くとボアの45%くらいに過ぎません。なので、リングの飛び込みなどの心配はまったくなくなります。

このポートの大きさの限界の問題を解決しようとしたのが、写真に見られるようなHONDAのいわゆる「Tポート」です。
もうひとつのメリットとしてリングなどの飛び込みを考慮すると、それを内径側に押し返すためにポートの形状は楕円型のタレ目にしなくてはなりません。ところが柱があれば飛び込みがそもそも起こらないので、EXポートの上縁をほぼ直線的に設計できるんです。そのためピストンが下がっていくときに排気をいっときにドっと排出できるというメリットもあります。

iBはHONDAさんが当初レースで2ストに乗り出していったときにRS125/RS250などのシリンダーの製作をお手つだいする機会に恵まれました。そして他社ではうまくできなかったこの「柱の逃がし」加工を見事にやってのけたおかげでその後HONDAさんの2スト補用シリンダーの加工を一手にひきうけることができた、という自慢話はいずれまたどこかでじっくり披露させていただきますが、(^^;;;;
とにかくこれはiBが最も得意とする2ストシリンダー加工の中でも最大のヒット技術なんです。

この「柱の逃がし」を正しく行わないとEXポートには熱が集中するので柱部分が熱膨張してすぐに焼きつきを起こしてしまうんです。モトクロスなどの当初はHONDAさんもこの問題で苦労されたようです。
そしてHONDAさんはこのポート形状について特許をもっていましたので、他のメーカーはこれと同じポート形状を使うことができず、2ストの出力面ではつねにHONDAさんがアドバンテージを持っていた、と言えるくらいこれは大事な技術だったんです。パワーのHONDA、ハンドリングのYAMAHAなんて言われましたよね。その原因はここにあったと言ってもいいのかもしれません。

その技術を使うことでH1/H2が抱えている問題を解決することができるのではないか。iBはそう考えました。すでに特許は切れていて、2スト最終期にはSUZUKIもアプリリアも同じようなポートを持っていたようです。

それには柱をたてたスリーブを柱付きの削り出しで製作して、スタンダードのスリーブを削り落として入れ替えればいいのではないか!2ストスリーブ製作もウチの得意技術ではないか!(^o^)

このような技術的な背景があってiBはH1/H2の異常磨耗の問題に真剣に取り組むことになったんです。
長くてすみません。m(_ _)m

続きはまた明日。

posted by sotaro at 08:12| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | H1/H2-ICBMR | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月13日

H1/H2-ICBMR について解説します!

これはH1純正鋳鉄シリンダーの磨耗の状態の写真です。
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この写真はお客様からご依頼のH1シリンダーをご希望のピストンサイズまでボーリングしたところ、IN/EXの巨大なポートの上下が異常磨耗を起こしていて、削りきれないという状態の写真です。
これはINTAKEポートの下側の写真ですが、ピストンスカートがポートに飛び込むように上下するため、どうしてもポートの上下に強くスカートがあたって大きく磨耗してしまうことになります。
この場合もう1サイズ大きなピストンを用意してさらにボーリングをすることになってしまいます。
しかもせっかくきちっとクリアランスを出してボーリング・ホーニングしても、この磨耗がかなり早く発生してしまうと伺っています。
巨大なIN/EXポートを持つために大きなパワーが得られる反面、この異常磨耗が起きてしまうというのが、H1/H2などマッハに共通の特性ということで、オーナーのみなさまはスラップ音やリング音はやむを得ないものと割り切って乗ってらっしゃるということですね。
このマッハの残念な弱点を根本的に解決しようというのがiBのICBMR 技術を利用したH1/H2-ICBMR シリンダーです。
このあともこの試みについてお話しさせていただこうと思いますので、よろしくお願い致します。
posted by sotaro at 13:16| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | H1/H2-ICBMR | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする