
午後から雨だというので朝のうちに、僕がよく行く近くのラフロードを通って、いつもの六道山公園まで、シェルパTと散歩に行ってきました。
ここまでとてもゆっくりと走ってきました。前にスコティッシュで来たときよりも、なぜかぜんぜん飛ばす気にならず、ほんとにとことこと小さな水たまりもよけながら、走ってきました。
ここでエンジンを止めてみました。
大きな声で鳥が鳴いていました。聞いた事もない複雑な鳴き声で。
あれはあきらかになんらかの意味を伝えようとしているにちがいありません。だって、そうでなければあれほど複雑に多彩に鳴く理由というのが想像できません。
少しのあいだ鳥の声を聞きながら休んだ後、ホットスタートに挑戦です。
9番の熱価の高いプラグでそんなにゆっくり走って、いくらかかぶり気味になったりしていないだろうか、などと思いながら、チョークは押さず、スロットルを8分くらい開いて、祈るようにキック。
なんと、ほんとの最初のキック一発でブロローン!とかかってくれました。
えらいぞ、シェルパT。
飛ばさないで、ゆっくりと走る事が楽しく感じられるバイク。
僕にとっては理想的なバイクを、僕は手に入れる事ができたんだと思います。
ほんとに幸せな気分でした。
そうそう、はじめの頃、かからないシェルパのサイドスタンドを立てて、その上にたってキックを繰り返すうちに、とうとうスタンドを折ってしまったことがありました。実際このあいだ手に入れたマニュアルにも、サイドスタンドはライダーを含まないシェルパの重さを支えるように作ってある。
だから、サイドスタンドに体重をかけてキックするな、と書いてありました。
それを読んだときは、なんだ、不便だな、ちゃんとライダーの体重も支えられるように作ればいいじゃないか、と思ったんです。
あさはかでした。
今日オフロードでエンジンをかけてみて、それがわかりました。
地面が柔らかいオフロードではサイドスタンドは、どんなにしっかり作られていたとしても、地面にめり込んでしまってバイク自体の重さを支える事すらできないんです。まして、バイクの上に立つ事などできません。
普段から、サイドスタンドなしにエンジンがかけられなくては、とても足場の悪いところでエンジンをかけることなどできないでしょう。
それなのに、しっかりとしたスタンドを作る事は、無駄なコストと重量をバイクに加える事になってしまいます。だから、スタンドはこういう設計になっているんですね。なるほど。
不調だったエンジンのせいで十分すぎるほどのキックの練習を積んだ僕は、このごろはサイドスタンドを使わずにバイクの横に立って、右足でエンジンがかけられるようになっています。そのおかげでオフロードでも困らずにエンジンをかけることができたのでした。
やはり、ブルタコのバイクづくりは、それなりによくできているのかもしれません。いいバイクを手に入れました。
でも、幸せなだけの気分はそんなに長くは続きませんでした。

花を踏まないように乗り入れ、そのあとも花の咲いていないところを選んで押して戻ってきました。
その後も、トコトコと走っていくと、マウンテンバイク(自転車)に乗った男の人たちの集団と遭遇。派手なウェアを着て、ヘルメットをかぶって、なんだか本格的な感じの人たちでした。
その彼らの僕とシェルパを見る目が、なんとなく、、、、なんとなくなんですが、暖かくはない感じに見えました。「なんでこんなとこまでバイクで来るんだ?」そう、言われてるような気がしたんです。
僕がこんなに大事にしているバイクを、彼らはあまり好ましくは思っていないようでした。
実際に言われたわけでもなんでもないので、僕の思い込みかもしれません。
むしろ、僕の気持ちの中の方に、自分の筋力だけで山に登ってきた彼らに対するちょっとしたひけ目があったんでしょう。
そのあとの帰り道のあいだは、ぼんやりと
滅びゆきつつある2ストバイクとそれを大事に思う自分。
でも、そのバイクが間違いなく排気ガスを出していること。
そんなことを思いながら、降り出しそうな灰色の空の下を家まで戻ってきました。
エンジンは、そしてそれを載せたクルマやバイクはまちがいなく、排気ガスを出します。今のところそれは不法なことではないけれども。
特に自然の中に乗り入れる乗り物としてみた場合に、わずかとは言えクリーンとは言えない排気を出すシェルパTは、どうなのか。
排気が大気を汚す。
それは、僕の趣味の問題であるばかりでなく、内燃機関部品の修理再生を行うウチの会社の存立の意義にも関わる問題のようにさえ思えてきます。
大袈裟かも知れません。それに、今現在はシェルパTに乗ることになんの問題もないとは思います。でも、、、、。
そんなことを考えるうちに前にも考えた事がまた頭に浮かんできました。
もし近い将来燃料電池車が普及して水素ステーションがあちこちにできるようになったら、僕はなんとかして、水素で古いバイクが走るような仕組みを考えてみたいな。カンタンではないだろうけど、もし、できたら、素晴らしいことだな。
そこまで思い至ると、なんだかまた気持ちが晴れてきました。
シェルパTは、僕をこれから先いろいろなところへ連れて行ってくれそうです。
家に帰ってここまで書いたら、いま、強い雨が降ってきたようです。
早い時間にシェルパTと散歩に行ってよかった。