今日は府中の試験場まで行って免許の更新をしてきました。
昔は試験場で講習を受けるといらいらすることが多かったものです。人の流れの整理ができていなかったし、講習の内容もやたらに感情に訴えるビデオなんかみせられてうんざりしたり、あまりに科学的でない内容に講師に食ってかかりたくなる気持ちを抑えるのがたいへんでした。
ところが!今日は感心しちゃいました。雨の平日で空いていたせいもあるのかもしれませんが、人の流れがよく整理されています。どこか一ヶ所がボトルネックになるようなこともなく、実にうまく多くの人をさばいている。
最も関心したのは講習の内容です。講師は女性で内容もたいへんによく整理され、ドライバーに必要な情報が見事に詰め込まれた2時間でした。また、受講者の心理もうまく掴んでいました。エアコンの設定温度、マイクの音量、休憩時間のとりかた、飽きさせない工夫、過度にリアクションを求めないうえに、押しつけがましさがなくて科学的。お見事!
ひとつだけ例を挙げると、直進するバイクと右折するクルマとの事故がどうしても減らないという話しがありました。
で、この話しをする前にまず、黒板に同じ長さの直線を2本書いて見せて、両端に矢印のように見える棒とおちょこになった傘みたいな棒を付け加えてみせるんです。これ自体は有名なのでみんな知っていると思いますが、この2本はどうしても矢印の方が短く見えてしまいます。
もうひとつ真横に書いた直線とT型に接する垂直に書いた直線を描いて見せて長さを比べさせます。これはどうしても縦の方が長いようにみえます。頭では同じ長さとわかっているのに、見た目はどうしても違って見える。こういう錯覚をまず体験させられるわけです。
その上で右折バイクと直進車の事故も実は錯覚によるものなのだというわけです。向ってくるバイクは多くの人(80%)が実際よりかなり遅く錯覚するのだそうです。つまり目視ー判断ー操作という流れをいかに真剣に正しく行ったとしても、さらに錯覚によって事故が起こる可能性があることを実感を持って説明してみせるわけですね。これは実に上手でした。
例になっている直線の長さの錯覚がシンプルであるだけにかえって説得力があるんです。
その上で右折する車のドライバーには錯覚があるのだから、いかによくみてだいじょうぶだと感じられてもここは理性と知識でバイクを先に行かせることを求めるわけです。一方バイクのライダーにもいかに優先権があってもドライバーは錯覚を起こして入ってくるのだから、先に行かせてやりなさいと説くわけですね。うーん、たいしたもんだ。
実際自分も向ってくるのが大型のダンプと小さなバイクだったら、やはり同じスピードだとしても錯覚を起こすかもしれないな、と実感しました。やはり人間自分の身に危険が及ぶかどうか、ということで無意識に自己防衛が働く場合とそうでない場合が起こるのは止むを得ないのではないでしょうか。そのことを知っておいて、自分の感覚を否定してでも理性的に行動しなさい、というのは、やはり的確なアドバイスになっている、と僕には感じられました。
最後にはんこをもらう時に一言、「お見事な講習でした」と言ってあげようかと思ったんですが、講師の方は忙しくされていたし、まったくそんな期待をしてらっしゃらないようにお見受けしたので、言いませんでした。
「交通安全協会の佐藤さん、お見事でしたよー!!」ってここで言ってもしょうがないか。
あの内容は誰が考えるんだろう。非常に私的な逸話も混ぜて話されていたので、全部がマニュアル通りというわけではないように思えるんですけどねー。すばらしい。
しかし、僕はこういうところにも今の日本の成熟というものを強く感じます。日本はけしてまちがった方向にはすすんでいないんじゃないかなあ。
郵政は民営化した方がいいと僕は強く思いますけど、警察、特に府中試験場は民営化しなくても、ちゃんと受講者の心理に応えて、ヘタなサービス業よりもきちっとした対応をしてるように思いましたね。(^^)
そうそう、そう言えば行きのバス運転手はだめだったな。何しゃべってるのかわかんないんだもん。帰りは武蔵小金井まで雨の中歩いて帰ってきちゃった。
しかしウチもお客様に対する対応はよほどがんばらないといけないな、とも思ったのでした。
感じの悪いものの代表みたいだった試験場ですら、あんなに洗練されてきたいまの日本の中では、お客様はそれだけレベルの高い接客に慣れているということにもなります。そんななかでウチもぼやぼやしていられないではないですか。
がんばらなくっちゃ。
特に私の個人のレベルでの対応だけでなく、会社としてのシステムがちゃんとお客様のお求めに応えられるように作っていくのが、自分の仕事だよなあ、などと考えながら、雨の中を歩いてきたのでした。
posted by sotaro at 17:31| 埼玉 ☔|
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