・焼きつきにくい
これも低フリクションにも関連はしますが、対焼き付き性はそれだけでシリンダーの一つの性能指標になり得ます。
ICBMR /EVER SLEEVERpat.に使用されているニッケルベースのメッキはピストンとの対焼き付き性能にもたいへん優れています。
写真はLOCのレース予選において点火タイミングのミスによってピストンが過熱し、見事にピストントップに大孔があいてしまった状態です。この時シリンダーの内径壁面にはわずかに熱で溶けたピストンのアルミが残りましたが、ごく僅かでペーパーで擦り落として復活し、ピストンとリングの交換で決勝は問題なく走り切ることができました。
もしこれが鋳鉄スリーブでしたら、完全にピストンとシリンダーが焼き付いてしまって、とても決勝を走ることなどできなかったでしょう。また、シリンダーはその後も最低限のホーニングをして継続使用することができました。
iBには毎月数多くのNSRシリンダーが再メッキ加工のために送られてきます。焼き付かせたので再メッキをというご依頼が多いのですが、これも実はホーニングだけをしてこびりついた溶けたピストンを落とすと、下から無傷のメッキ面が現れて再メッキをする必要がないケースも多くあります。(HONDA純正のNSRのメッキとICBMR /EVER SLEEVERpat.に使用されているメッキは同種のものです。)それほどメッキは硬度が高く、焼きつきにくいのです。