
このエンジンは4気筒のうち
#1をiB製ターカロイ削り出し鋳鉄スリーブ
#2と#3をICBMアルミメッキスリーブ化
#4をもともとの純正スリーブをボーリング
という各気筒別々の素材で仕上げたもので、極めて特殊なiBでしかできない構成のエンジンです。それぞれの素材・仕上げによる摩耗の状態の比較を同一エンジン内で同環境・同走行距離で試みた実験用試作シリンダーになっています。
中2気筒はスリーブがアルミの銀色、両端2気筒は鋳鉄スリーブのねずみ色のスリーブツバ部が見えているのがお分かりいただけると思います。
まずはピストンの状態です。

#1のターカロイ鋳鉄製スリーブと摺動したピストンにはいくらか傷がついています。



#4の純正鋳鉄スリーブと摺動したピストンはかなりあたりの強さと小傷が多くついているのが見て取れます。
いずれもまだ使用可能ではありますが、たった4,000kmの走行でこれほどの差があるとは思っていませんでした。
そしてシリンダースリーブ内径の状態です。

#1のターカロイスリーブはあたりの強い部分もありますが、大きな摩耗はありません。


#2と#3のICBMアルミメッキスリーブでは強く当たるはずの部分もまったく摩耗がなくクロスハッチが綺麗に見えています。

#4の純正鋳鉄スリーブでは予想以上にあたりが強い部分があり、その部分のクロスハッチはすでに消えています。
画像では見にくいですが、縦傷もついています。
それぞれの摩耗状態を測定してみました。

社内用のメモで見にくいと思いますが、各気筒のX方向、Y方向、上中下のクリアランスとピストンサイズの測定結果です。
結論としては#1から#3の3気筒では有意な差はありません。
#4の純正鋳鉄スリーブだけが他に比べて摩耗が進んでおり、その差は0.01-0.015mmと言ったところです。
上記の実験結果はまだたったの4,000km走行の途中経過ですが、それでもどうやら純正鋳鉄スリーブはそうとう摩耗が大きいことが
予想されます。あたりの強いY方向の下部では初期摩耗を考慮しても、すでに0.02mmくらい摩耗が進んでしまっているようです。
社内で行なっている地道な耐久テストのほんの一端ですが、ご紹介してみました。
iB製ターカロイスリーブも摩耗が少なくなかなか善戦していると思います。
それでもやはり綺麗なクロスハッチの状態などを見ると、アルミメッキスリーブ化のメリットの大きさを実感させる内容になっていると思いますが、いかがでしょうか。
耐摩耗性以外の「1/3の軽さ」「滑りがよく焼きつきにくい」「放熱性がよい」「スリーブ・シリンダー・ピストンの全てがアルミになることによる膨張率の均一化」など多くの利点を考えた時、アルミメッキスリーブの圧倒的な優位性は揺らぐことがないと思われます。
