2016年12月16日

ポートの柱がなくなった理由

H1の初期型のシリンダーはINTAKEポートに柱が立っています。デュアルポートと呼ばれていたようですね。
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今回のH1/H2-ICBMR ではINTAKEの柱があることの価値を主張しているわけですが、INTAKEポートの柱はなにもiBの発明でもなんでもなくて、最初はちゃんと純正シリンダーのポートにも柱はあったんです。
当然の疑問ですが、それでは「なんでカワサキはポートの柱をやめてしまったんだろうか。」ということになりますよね。なにか柱があると性能や品質に問題でもあったんでしょうか。

この理由はなんといっても、この柱を作ることは当時の鋳造技術的に無理があった、ということに尽きると思います。

iBは以前モンキーのシリンダーの鋳造を外部に依頼してやっていました。実はその鋳物屋さんには往時H1/H2のシリンダーの鋳造をやっていた帝国ピストンリングさんの担当者だったかたが移籍していらしたんです。そして、その当時でもすでに昔話になっていたH1/H2の鋳造の苦労話しをしてくれました。「あれは歩止まりが悪くてね〜!」というわけです。

つまりあの細い柱の部分に溶けた鋳鉄の「湯」が流れ込んでいく、これがうまくいかないということなんです。それはそうですよね。他の部分にくらべてあきらかに細長い柱の部分に湯が流れ込みにくいだろう、ということは鋳造にはシロートの僕らが見てもわかります。ホウアンを変えてもオシユを変えてもどうしてもうまくいかない。一方後期型のノドチンコのような形状だったら、細いところがなくいかにも湯が簡単に流れ込みそうな形状です。なんとか鋳造をはじめたものの、どうしても良品率があがらなくて、とうとう途中で柱を諦めてしまった、というのが真相だろうと思います。

そしてそのかわりに幾らかでも飛び込みを減らす目的であの「ノドチンコ」を設けたんですね。でも、結局柱のようにはピストンスカートの飛び込みを防ぐことができなかった。こう考えるとその後の機種でも柱が立てられなかった理由も納得できるのではないでしょうか。やりたかったけど、できなかったんです。
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iBはそのH1/H2のシリンダーに独自の技術で柱をたてることにしました。ICBMR はアルミスリーブをムクの丸棒から削り出してポートをも造り出します。そのときに柱がついた形にポートを削るだけでいいいのですから鋳物屋さんが苦労されたような問題はいっさいないんです。そしてそこには前回も書いたように超高硬度のメッキがのっています。これは当時の技術者たちが望んでもできなかったことを現代の技術で実現しているのだ、と言えるのではないでしょうか。これがiBが目指してきた「モダナイズ」の究極の一例といっていいと思います。旧いエンジンにも現代の技術を投入することによって、チューンナップなどしないでノーマルスペックのままでも、きれいによく回り耐久性のあるエンジンが作れるのではないか、それがiBが目指したチューンナップでもレストアでもリペアでもない「モダナイズ」なんです。
メッキのシリンダーは本当に優れたシリンダーなんですよね〜。現在では販売される多くの機種にメッキシリンダーが採用されているので、そこまでメッキの美点が強調されることはありませんが、鋳鉄スリーブ内径を持つシリンダーに比べると、ほんとうに理想のシリンダーと言っていいのがアルミメッキシリンダーなんです。

さて、連日H1/H2-ICBMR の話題でお騒がせしました。ひとまずこれで切り上げたいと思います。H1/H2-ICBMR はiBが12年前に開発を始めてついに完成した現時点でのICBMR 技術のひとつの頂点になると考えています。
ぜひH1/H2オーナーの皆様には採用を真剣に検討していただきたいと思います。それだけの価値有る製品になっていると信じています。よろしくお願い致します。
posted by sotaro at 16:55| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | H1/H2-ICBMR | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
前から思ってますが、2ストではスリーブをシリンダブロック鋳造時に
入れるのはポートの存在から無理と思われるため、圧入だろうというのは
わかるんですが、そのスリーブの製造法がkawasakiは
そのままの形を鋳造で作って圧入、ホンダは削りだして
圧入ということですか?
その帰結がポートの柱の有り無しによる耐久性。

して4ストでは他がブロック鋳込み時にスリーブも入れている
世代でもkawasakiは後から圧入していて、素材やせで抜けてくる。
という結論ですかね。

で、修理するならホンダのスリーブ製造技術とメッキその他
を合わせたICBMを用いればシリンダー母材さえ劣化していなければ
ほぼ再生できるといったところでしょうか。
Posted by BEAT at 2016年12月21日 16:56
>BEATさん

それが、この時代(60年代末)にはKAWASAKIも他社もすでに鋳込みスリーブなんです。2ストから先に鋳込みスリーブになっていきました。スリーブが回るとたいへんだからでしょうか。なので、あっためて抜くことはできず、鋳鉄スリーブは削り落とします。あの細い柱を鋳造することが70年代には難しかったんでしょうね。

一方NSRなどHONDAのシリンダーは80年代にはもう全アルミシリンダーに直メッキ(スリーブレス)になっています。70年代には鋳鉄で柱付きも一部にありましたが、すぐに全アルミシリンダーの時代になってしまいました。全アルミですと柱の裏側にもアルミの肉がありますから鋳造もそこまで難しくないのではないでしょうか。

逆に4ストについてはかなり後期までどこの会社も圧入スリーブでした。YAMAHA SRなどは現行でもいまだに圧入スリーブです。

ICBMR のスリーブ製造技術はiB独自のものです。ムクのアルミの丸棒からNC旋盤でスリーブを削りだしマシニングセンターでポート孔を彫ります。HONDAさんの技術ではありません。全アルミシリンダーではスリーブ製作の必要はありませんから。
量産でいちいちスリーブのポートを削りだしなどしていては商売にならないと思います。(^o^)
シリンダーで減るのはほぼ内径だけですから、iBにご依頼いただければどんなシリンダーでもまず再生できないことはない、とお考えいただきたいと思います。(^o^)
Posted by sotaro at 2016年12月22日 08:28
なるほど。
その辺の詳細な説明がほしいと思ってたんですよ。
今までの断片的な物ではよくわからない。
「量産でいちいちスリーブのポートを削りだしなどしていては商売にならない」
ここ重要で、HONDAのスリーブレスシリンダーの構造を
削りだしスリーブで実現し、どんなシリンダーをも再生する
それがICBMという所でしょうか。

シリンダーの構造の大ざっぱな歴史話をした上でICBMの特徴を
簡潔に説明した方が良いかと思います。

当方100%わかっているわけでは無いので、端から見ていると
前書き込みのように認識します。
よって、点の話も良いのですが面の話と、それにより
よりICBMの特徴がわかるようにということです。
Posted by BEAT at 2016年12月22日 14:02
そうですねえ。

そのあたりのこと(スリーブの歴史?)を知りたいというかたがいらっしゃるとしたら、ご質問いただければなんなりとお答えさせていただこうと思います。(^o^)

ICBMRに興味をお持ちのマニアックなH1/H2オーナーさんなら自分のシリンダーの構造を見たことくらいはあると思うんです。一方HONDAのシリンダーにはあまり興味はないでしょう。なので、blogの本文としてはICBMR の特徴のほうに焦点を絞らせていただきたいと思います。
Posted by iB井上 at 2016年12月22日 15:03
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