
もちろんアルミメッキ以前に鋳鉄ではすでに製作実績はありました。でも、鋳鉄でもアルミメッキでも2ストスリーブを製作する手間というのはほとんど変わらないんです。むしろ鋳鉄のほうが最後にリューターでポート合わせをする際にはアルミ地よりは鋳鉄のほうが硬いのでたいへんなくらいです。メッキのコスト分だけはICBMRのほうが高価にはなりますが、せっかく2ストスリーブ製作までやるのであれば、これからはICBMRのほうが絶対におすすめできると思います。
柱がたった分だけポート面積が小さくなりますので、その分だけサイドを幅を広げるのとハート型の部分を細くけずることで、もとと同じだけのポート面積を確保しています。


1番最初は柱なしで製作しお納めさせていただきました。これでもいまのところメッキの硬さのおかげで磨耗は発生していないようです。
ここでメッキの硬さについてご説明しておくと、ビッカース硬度という比較的硬いものを測定する硬度の規格で言うと、鋳鉄の硬度が45から硬いもので140程度のようです。それに対してICBMR のメッキはニッケルの地の部分でビッカース硬度が450とかなり硬くなります。そのうえメッキの中にシリコンの粒子を混入させてあり、このシリコンの粒子はビッカース硬度がなんと2,000!ということで、圧倒的な硬度を誇ります。このシリコン粒子が最後まで磨耗の最前線にあって、ニッケル地がわずかに磨耗してもこのシリコン部分ががんばっているので、内径の寸法変化には至らないということなんです。
昨年6万キロを走行したYAMAHAのセローのエンジンのシリンダーを測定させてもらう機会がありましたが、ほとんど誤差の範囲程度しか磨耗していませんでした。(直径で5μ程度)ほんとうに「減らない」と言っていいほど硬いのが現在のメッキシリンダーなんです。
さらに前回ご説明したように現在はINTAKEポートに柱付きで納入を開始しており、さらにiB得意のEXHAUSTポートに柱の逃がし付きの開発を始めたところです。これが完成すれば究極のH1/H2シリンダーということができると考えています。
H1/H2というのは当時世界最速を誇る市販車であったということです。日本が第2時大戦後世界にもういちど経済で進出していくときの尖兵の役割をはたしたのが、車や電化製品に先立って世界を驚かせた日本製のモーターサイクルであったと思います。
そのなかでもこのマッハが世界に与えた衝撃というのはけして小さいものではなかったはずです。その世界最高だったバイクの弱点をカバーできるある意味世界最高のシリンダーをいま僕たちは造ろうとしているのだと思います。大げさでしょうか。いえ、僕はそうは思いません。マッハを愛するオーナーのみなさまと一緒にこれからiBはぜひ世界最高のシリンダー作りに挑戦したいと考えているんです!(^o^)

このあと「2ストマガジン」の後藤編集長と一緒にH2-ICBMR のシリンダーは来春のTOTに向けてEXHAUSTポートの形状に工夫を重ねていきます。高出力と高耐久性を兼ね備えたシリンダーをぜひ完成させたいものだと考えています。
次回は放熱性など硬度以外のICBMR の特長についても付け加えさせてください。(^^)
