2012年10月15日

アルミメッキ化シリンダー[ICBM] 開発の意義と開発ストーリー (2)

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メッキシリンダーがほんとに優れているという点については、改めて語られる機会があまりありませんね。

現在ではメーカーが採用して多くのバイクに当たり前のように使われているので、いまさらアルミメッキシリンダーがどれだけ凄いかということはあまり話題にもなりません。

ポルシェやDUCATIなどが割と古くから採用していました。現在につながるこのメッキの技術はもともとドイツのマーレー社が開発したものがその源流になっていると思います。そのほかのメッキもあったのですが(国産でもいくつかありました)現在使われているシリンダー内径のメッキはほとんどその組成は同様のもので、ニッケルベースでそこにシリコンカーバイドの粒子を含有したものです。

メッキシリンダーの優秀性は
◆軽量
◆熱伝導がいいため放熱性がいい
◆表面の滑りがいい /焼き付きにくい
◆ピストンと同素材になるので膨張率が近くクリアランスをすくなく設定できる
◆耐久性に優れる
などいろいろありますが、なんといっても最大の価値は耐久性に優れている事です。iBもこのことを最も大事なことと考えています。

「減らないシリンダーを創りたい、、、」それがiBの永年の夢でした。

例えばKAWSAKI のH1やH2(大排気量空冷2スト3気筒)などですとそのパワーも素晴らしいのですが、シリンダーの痛みも早いんです。せっかくオーバーサイズピストンを入れてボーリングしても、3,000kmも走るとリング音が出始めるのだ、と専門のショップさんに伺った事があります。当時の鋳鉄素材の問題もあるのでしょうし、ポートの下に強くピストンリングが当たるというようなこともあるのでしょう。これではせっかく精度高くクリアランスを出してボーリング・ホーニングしても、愉しく乗れる期間があまりにも短いですね。

なんとかして、減らないシリンダーを創ることはできないものだろうか。

そのための対策としてiBはターカロイという耐摩耗鋳鉄を採用してスリーブを造ってみたり、プラトーホーニングの技術をサービス部のボーリング仕上げにも採用し、さらには提携しているエヌ・イーさんのご協力を得てWPC&MOS2という素晴らしい表面処理技術を導入したりもしています。

これらによってかなり摩耗の程度を軽減できるようになりましたが、それでも鋳鉄のスリーブが摩耗してしまうという根本的な問題自体は止める事ができません。

そこで、考えたのが「シリンダーのメッキ化」でした。

少し技術的な資料になりますが、メッキシリンダーの硬度についてお話します。
通常鋳鉄の硬度についてはブリネル硬度というものが採用されています。シリンダーに使われる鋳鉄にもいろいろありますが、だいたいブリネル硬度で130とか150という硬さの数値になります。(この数値は正確には対応しないものの下のビッカース硬度においてもほぼ同様の数値となります。)

一方、メッキ後の内径の硬度を表現する場合にはビッカース硬度というものが用いられます。メッキ後のシリンダーの硬度は基材のメッキの金属部分で450~500mHvというはるかに高い数値になります。

ただ、この二つの数字はそのままでは比較する事ができません。ブリネル式ではビッカース硬度表の上の方の数値までは測定できないんですね。メッキの硬さと鋳鉄の硬さでは同じ指標はつかえない、つまり文字通り「スケールが違う」んです!!

というのも素地の部分ではなくこのメッキに含まれるシリコン粒子の硬さはなんとビッカース硬度で2,500mHvもあるということなんです!これはとんでもない硬さであって、シリンダーの内径に於いてはこのシリコン粒子の部分が摺動の最前線にあって、この部分はほとんど摩耗することがありません。

いかがでしょうか。減らないシリンダーを目指したiBがメッキシリンダーをなんとしても採用したかった理由がご理解いただけるのではないかと思います。

よく「RZをレストアしても2ストは長持ちしないから、、、」などというお言葉にも出会うことがあります。でも、RZのエンジン以外の部分は4ストのモデルと比べてなんら遜色はないはずです。このシリンダーの摩耗の問題さえ解決すれば、例えばRZなどの2ストモデルにZ1や他の4ストモデルと同じようにお金をかけてレストアしても末永く乗り続けていただくことはできるはずだ。

iBとGEN's Factoryさんはそのように考えて、協力してRZのメッキ化シリンダーの開発をしてきたんです。その夢が今回ついに叶う事になりました。
まず製品化第一号としてRZ初期型用アルミメッキ化シリンダーを発表したのは、そのような僕たちの思いを込めてのことです。

そして、今回 [ICBM]というサービスを展開し、多くのシリンダーにその適用範囲を広げようとしています。


ここでは耐久性という一点を大きくとりあげてご紹介しましたが、一番最初にも書いたようにメッキスリーブは他にも多くの長所があります。

鋳鉄に比べてアルミの比重は1/3ほどです。エンジンによってはこの部分だけでキロ単位の軽量化ができます。比較的エンジンの上方、高い部分に取り付けられる事の多いシリンダーの重量をキロ単位で軽減できることは、バイクの運動性にもよい影響を与えられるのではないでしょうか。

熱伝導がよく放熱性に優れているという点も高く評価できます。電子部品などの放熱フィンもみんなアルミでできていますよね。特にiBがお手伝いするような旧いバイクには空冷のモデルも少なくありません。レースの後半に熱歪みでタレてきてしまうヴィンテージレース用のエンジンもアルミスリーブ化で冷やしやすくできるのではないでしょうか。 (そうか!僕のBultaco Metrallaも、、、!!(^o^))

また、摺動性も鋳鉄スリーブよりも優れています。滑りがよく抵抗が少ないんです。

さらに減らないメッキシリンダーは、当然最初からプラトー仕上げを行って内径を仕上げます。減らないので慣らし運転を行う事で摺り合わせる事ができないんです!
そして、このプラトー状態が非常に長く保持されることになります。

また、ピストンがアルミでできている多くのエンジンに於いては、鋳鉄は膨張係数が小さいのでクリアランスを大きくとらなくてはなりませんが、シリンダーもアルミでピストンと同じ膨張係数であれば、クリアランスをそれだけ小さく設定することが可能なはずです。(但し、これは実際に完成後の鋳鉄スリーブエンジンをアルミスリーブに置き換える場合には、データがありませんので少しづつ実験をしてデータを集める必要があると思います。)

このように内径にメッキをしたアルミシリンダーというのは、ほんとうに悪いところが何一つ無く、「理想のシリンダー内径仕上げ技術」と言っていいようなものなんです!!


2006年、日本のバイクメーカーは(日本国内では)一斉にオーバーサイズピストンの供給を停止しました。オーバーサイズピストンがなくてはボーリングすることによってバイクに乗り続ける事はできないということになります。
(実際には多くの機種で社外メーカー製のピストンが入手できますが、、、)

私達はこのような大企業の姿勢に大きな疑問を感じます。バイクを使い捨てにしていいんだろうか。

オーバーサイズピストンがなくても、スリーブを製作して入れ替えることができれば、末永く愛するバイクに乗り続けることが可能です。そのスリーブをアルミで製作してメッキ化すれば、ほとんど愛車の寿命の間シリンダーの摩耗については心配しなくてもいいくらいの理想のシリンダーをつくる事ができるんです!!

今回はアルミメッキ化シリンダーの技術的な特性についてお話しましたが、もう一度次回アルミメッキ化を通してiBがいったい何を目指しているのか、というお話をさせていただきたいと思っています。

それはカンタンに言うと、
「オートバイやクルマは使い捨てにするものではない!」というiBの主張です。
ぜひ、次回もおつきあいください。



posted by sotaro at 09:39| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 加工のご紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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