いつもふざけたことばかりの当blogですが、ちょっとまじめに仕事の事も書いてみよう、と思い立ちまして、 今回から新カテゴリー「なぜなぜ内燃機?!」シリーズとして開始致します! このカテゴリーでは、ごくごく基本的な内燃機加工に対する疑問にお答えしようというもので、 当blogの読者の皆さんのようなマニアのかたにはわかりきったことになるかもしれませんが、 まあ、おつきあいください。 第一回はボーリングがなぜ必要になるの?ということでお送りします。 ![]() これはちょうどいま、受注棚に置いてあったSR400のシリンダー内径です。 うっわ〜、黒サビが出ちゃってますねー。 かなり長期間放置プレイされたエンジンでしょう。かわいそうに。 リングが止まっていた位置の上に水でもたまってたんですかねー、黒々とした錆のかたまりが見えます。 こうなるとボーリングしても、スリーブの奥に向かって錆がすすんでいて、かなり大きくとらないときれいにならないかもしれません。 このくらい内径がひどければ、こりゃなんとかしなくちゃ。ボーリングが必要だなってかえってわかり易いですね。(^o^) ![]() さて、こちらも受注棚からひっぱり出してきたGT380のシリンダーです。 これはSRに比べるとかなり程度はいいです。順等に摩耗している感じですね。 縦傷が見えますが、これはどんなシリンダーでもエンジンが回った以上避けられない程度の傷です。
![]() こちらはホーニング完成の棚にあったGS400のシリンダー。通常ホーニング仕上げの品物です。こういうシリンダーを見ると面研磨もしたくなります〜〜!!(^o^) 右上の青い印はピストンとシリンダーの両方にウチでつけたマークです。 ピストンは同じサイズと言ってもミクロン代は誤差があります。 せっかくボーリングをするならその誤差分も吸収できるように、それぞれのピストンを正確に測定して きっちりクリアランスを出したいものです。 そのため、当社では多気筒のシリンダーの場合も全てのピストンをお預かりして、全部のピストンを測定して それぞれのピストンに合わせたクリアランスでホーニング仕上げします。 組み立てしていただく時も、ピストンとシリンダーの番号を合わせていただければまちがいなくクリアランスが確保できます。 ボーリング・ホーニングをすると傷や摩耗部分がなくなって3番目写真のような仕上がりになるわけです。 さて、このように内径をきれいに仕上げるのがボーリング・ホーニングなんですけれども、そもそもどうしてこのような作業が必要になるのでしょう。 何年も乗らずにほったらかしたから? 逆にあんまりバンバン乗りすぎたから? どちらも正しくはありますけれども、じゃあ、ちゃんと丁寧に乗ればエンジンにボーリングは必要ないのでしょうか。 ピストンリングというのはバネのように拡張してシリンダーと擦れ合うことで、爆発による高い圧力がピストンとシリンダーの隙間から逃げることなく、圧力の全てがピストンを押し下げるようにがんばってくれているわけです。 またピストンも実際にはシリンダーに触れて擦れ合って動いています。特にピストンの下部のピストンスカートと呼ばれる付近はシリンダーと接触しています。 この両方の部分が発生する抵抗がエンジン全体の抵抗の30%と言われるくらい大きな抵抗なんですね。 それだけ強く擦れ合っているから、いかに優れた耐摩耗性を誇るスリーブ材料を使っても、またリング側に摩耗に強く同時に相手を傷つけないメッキがしてあっても、毎分1万回転も回るエンジンの中でいつかはスリーブが摩耗してしまうことはしかたがないことと納得していただけると思います。 もうひとつエンジンの中でピストンはコンロッドを通してクランクと繋がっています。クランクの動きを考えていただくとクランクの軸に対して直角の方向にピストンが強く押し付けられることがわかると思います。爆発力はピストンを真下に押そうとしますが、言ってみればその力を横にも伝える事でクランクが直進運動を回転運動に変えているわけですから、その横の方向にピストンが強く押されること自体がエンジンの本質的な機能であり宿命だと言えると思います。(余談ですが、このフリクションを少しでも減らそうというのが田口さんのロングコンロッドの発想なんですね!) そのためにシリンダーは必ず楕円に減って行きます。もとは真円の内径がクランク軸に直角の方向だけが強く摩耗して楕円になっちゃうんですね。 こうなるといくらピストンリングが拡張してシリンダー内径に沿おうとしても、楕円の膨らんだ側では沿う事ができず、圧力がクランクケース側に逃げてしまいます。 やはりシリンダーの内径は真円でなければなりません。 つまり一度楕円になったシリンダーの内径を、また真円に戻す。これがボーリングの意味です。 そのためには楕円の一番大きくなったところよりも、もう少し大きな真円に削りなおして、それにあったピストンをいれてやればいいわけです。 これがオーバーサイズピストンですね。通常オーバーサイズピストンはスタンダードに対して0.25mm,0.5mm~1.00mmくらいまで用意されています。 これを以前はエンジンのメーカーが用意していたのですが、数年前から日本の4メーカーはこれを用意しなくなってしまいました。現在はアフターパーツメーカーさんが頼り、という状態です。 さて、よくお客様から測定ができないので、ピストンサイズをそちらで決めてください、というご依頼をいただきます。 この時、スタンダードから0.25mmサイズを飛ばして0.5mmにせざるを得ないことが、割とよくあります。 これがお客様にしてみれば残念に思われることも多いようですので、この機会にご説明をしてみたいと思います。 0.25mmのオーバサイズを選択した場合、これはピストンの直径がスタンダードより0.25mm大きいということです。 そうしますと、シリンダーの壁の削る量は直径で0.25mm、すなわち実際にシリンダーに当たる刃物が削る量は片肉で0.125mm ということになります。 ここではシリンダーが多くのエンジンの摩耗限度の0.1mmくらい摩耗していたからボーリングすることになったのだとしましょう。 そうしますと、0.25mm-0.1mm=0.15mm、その削り量は半分ですから0.075mmしか削り代がない、ということになります。この時点で既に切削加工の取り代としては不十分です。 摩耗量とは別に上のGT380のシリンダーにも見えるような縦傷がついているとします。もし指先の爪がひっかかるようだとその傷は0.05mmくらいあると言われています。 残りの0.075mm-0.05mmは0.025mmしかないことになります。 これでは切削加工の取り代としてはまったく不十分です。最低でも一桁上の0.1mmくらいは取り代が欲しいところです。 かといってホーニング加工だけでは表面はきれいになりますが、真円に内径を削る事ができません。 摩耗限界をもう少し超えていれば、削り代はまったくないことになります。つまりこれでは傷や摩耗部分をとりきることができないんです。 このような理由でちょっと摩耗が進んだシリンダーではひとサイズ飛ばして0.5mm大きなピストンを採用するということがよくあります。 オーナーさんとしては、大事なエンジンをできるだけ長くお使いになりたい。そのためには一度でも多くボーリングできる可能性を残しておきたいというお気持ちは私にもよくわかるのですが、残念ながら上記のような理由でご希望に添えない場合もありますので、ご理解いただければと思います。つまり順等に摩耗が進んだシリンダーでも2サイズ大きなピストンを採用せざるを得ないというのは、珍しいことではないんです、というお話でした。 当社では加工前提であれば測定やサイズの決定は無料で承っております。お気軽にお申し付けください。 ああ、またまたチョウ長文になっちゃいました。
内燃機の話を短くまとめるのはとっても難しいです。 こんな解説でもよろしければ、このあとも「なぜなぜ内燃機?!」のカテゴリーを少しづつ書いていきたいと思いますので、おつきあいください。 次回はヘッドの話で、なんで擦り合わせだけじゃだめなの?ガイド交換だけでシートカットはしなくていいです。っておっしゃってもそうはかないんですって言うことあたりを解説したいと思います。 よろしくおつきあいください。 |
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何〜んとなくのイメージしか無かったんでスッキリです
「なぜなぜ内燃機?!」楽しみにしています
このシリーズは商売直結なんでがんばって書かないといけないですね。応援ありがとうございます。